学力低下に歯止め?
 4月23日付の朝日新聞で45万人を対象にした2003年度学力調査の結果を見ました。予想どおりの結果といえばそれまでですが、間接的に「ゆとり教育」の目玉である総合的な学習の時間が矢面に立たされていますから、興味を深く読みました。
 学力についてはこれまで何回となくふれてきました。その中からいくつかリンクを貼っておきましたので、合わせてご覧いただければ幸いです。

28総合的な学習と学力論
77学び方と学力
128確かな学力と総合的な学習

 今回の結果について、文科省は「基礎的な事項を徹底する学校現場の努力で成果は上がりつつあるが、国語の記述式問題などにはなお課題が残る」というコメントを出しています。
 学力低下論が騒がれ出した対応策として、平成14年度から学力向上フロンティア事業が3年間展開され、文科省のかけ声の元、基礎・基本の徹底が全国に浸透していった成果ともとれます。しかし、現場の努力といいながら、急激な方向転換をして取り組んだ学校も数多くあるのではないかと予想します。
 総合的な学習の時間についての校内研究は、学習指導要領の前倒しで試行が始まった年から多くの学校が実施してきました。ところが、研究の成果が上がったかどうか、これからの実践に対する見通しが立ったかどうかという見極めをすることなく、学力向上を校内研究のテーマにして切り替えたところが数多く見られました。
 私が一番心配するところは、多くの現場が総合的な学習を模索している途中に唐突な形で学力向上策が打ち出されたことによって、異質な取り組みを余儀なくされたと理解する学校現場があるということです。読み、書き、計算という内容は短期間で取り組みの成果が上がりますから、思惑どおりの結果になったはずです。では、その成果を受けて子どもたちのどんな力を伸ばしていくのかということになると、また、元に戻ってしまいます。
 同日の朝日新聞の社説では、「考える力」が心配だと見出しを打っています。元に戻るということは、「ゆとり教育」の目玉を思い起こしていただければお分かりいただけるはずです。文科省が示したのは「生きる力」。学力低下の騒ぎで話題になるのは「考える力」。あらゆる教科領域で主体的な考える力を培っていけば、この「考える力」は「生きる力」に包括されると私は理解しています
 学校現場は従来からの考え方に立ち返って、基礎・基本を確実に押さえながら、地域の実情に合わせて「生きる力」を育てるべく具現化に取り組めばいいだけのことです。その柱となるのが総合的な学習であり、生活科であると思いますがいかがでしょう?

 新聞の見出しに使われた「学力低下に歯止め」という言葉は誤解を招かないようにしたいところです。学校現場がスキルアップの時間をとったり、補充をしたりしたから学力低下が解決したとは言えません。
 これまで、指導要領改訂のたびになかなか趣旨が全国津々浦々まで徹底しないことを論議した方がよさそうです。例えば、知識・理解と興味・関心・意欲の評価項目の順番が入れ替わったことで、多くの誤解が生まれ、知識・理解の評価がおろそかになっている現実があると思います。先生方は大丈夫ですか?