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福店で販売している福農園の黒米
20数年来栽培してきた古代米です。最初の種は、1991年頃、岩手県の「相馬屋」という米問屋さんが朝日新聞に紹介されました。黒米や赤米の話が掲載され、少量の種を無料で提供してくださるという文面につられて20粒ほどの種をいただきました。
 最初の年は種籾を増殖しなければなりませんから、棚田の一部を使って200ccほど収穫できました。赤米は精米するとほとんど色がなくなること、虫に食われやすいということから興味がわかず、やめることにしました。実のところ、赤米は種籾が50ccもとれなかったのです。原種に近い品種という情報を得ていましたから、肥料も農薬も使わずに栽培した結果です。
         

 2年目は80平方メートルほどの棚田1枚に植え付け、バケツ1杯半ほどを収穫しました。草丈が130〜140cmにもなり、大半が倒伏しました。脱粒も激しく、熟れた籾はすぐに落ちてしまいます。野鳥の餌にもなり、収量は半減してしまいました。田植え、刈り取り、脱穀、乾燥に至るまですべて手作業でした。植え付けた量が少ないから機械を使うほどではないという理由も成り立ちますが、品種の性質として機械との相性はよくなかったです。やむを得ず、最後の籾すり、精米だけは精米機を使ってしました。加減は難しく、かなりの割合で米粒が半分に割れてしまいます。

         

 そんな手間をかけて、なぜ作り続けたのかといいますと、混ぜて食べたり、おこわにするととても美味しかったのです。興味のある方に食べていただくと、やはり好評でした。当時は近隣で作る人もなく、栄養成分で注目を浴びるということもありませんでした。だれも手がけていないという珍しさも理由になりました。
 現在は、棚田の維持管理が困難になり、川に近い250平方メートルほどの小さな田んぼで田植機を使って植え、干木乾燥後にコンバインで手動脱穀をしています。田植機を働かせるには、伸びすぎた苗の葉を切りつめています。刈り取るときは、草丈が短くなるように高い位置で刈り取っています。
 7年前ぐらいに品種改良された短粒種が出回り、健康食品ブームにあやかってあちこちで販売されるようになりました。草丈も短くなり、機械の掃除だけ手間をかければ省力型の大量栽培ができるようになりました。それでも作付け農家はあまり増えず、市場では高額で取引されています。そんな動向があっても品種を変えずに私が作り続けているのは、原種に最も近い種類を維持するという理由があります。長粒種(インディアカ種)の雲南黒米は、中国雲南省から取り寄せた種籾でした。因みに、私たちが普通に食べている米は短粒種(ジャポニカ種)です。原種に近いかどうかは、籾の先についている芒(のぎ)と呼ばれる毛が長いことで見分けられます。米を作っている人は見ることができますが、米を食べている人は見ることがありません。

 福農園の黒米は、原種に近い古代米です。市場には玄米が流通していますが、そのまま炊飯すると硬いです。圧力炊飯なら柔らかくなります。それでもぬか部分は硬めです。そこで、自家用の循環式精米機を使って七分搗きに調整しています。
栽 培 資 料
種籾生産者 いわき市遠野町入遠野 佐藤吉行
      遠野町深山田 東山広幸
性質 肥料要求性 少(無肥料でも生育する)
   耐倒伏性  弱(倒れやすい)
   収量性   少
   雑草競合性 強
   耐干性   強(干ばつに強い)
   脱粒性   大(熟すとさわるだけで落ちる)
栽培時期はその地方の稲作作業に準じて行えばよい。
   浸 漬    7〜10日
   育 苗    40〜45日
   出穂後    15〜20日で落水。田を乾燥させる。
   刈り取り時期 出穂後35〜45日
草丈は1.5m位になり、倒伏しやすい。中生の稲より早めの落水で倒伏の際の発芽を防ぐ。

右が黒米の苗14日目
2aの田んぼ:田植え直後
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