51 先生の常識=応急処置。養護教諭の先生に下駄をあずける前にせめてこれぐらいはということが多くなっているようですから、いくつか紹介していきたいと思います。擦り傷。水道水で一番に洗い流すことです。痛がっても、あとでもっと痛い目にあわないためにきれいにすることを相手に伝えます。消毒の前に洗うことで、傷の程度を確認することもできます。血液は空気に触れると固まる性質を持っていますから、保健室に連れていく前に近くの水道で洗うことが一番です。出血が少ないかすり傷ならこれだけで乾かしておけばよいということで片づいてしまいます。

● 切り傷。深い傷は出血が止まりにくいので、きれいなティッシュで傷を押さえて止血するのが一番簡単です。患部を心臓の位置より高くすることで、出血の程度を押さえられる場合もあります。カッターナイフなどの鋭利な刃物で切った場合は、出血にともなって雑菌が洗い流されるという効果もあります。しかし、さびた刃物などは、患部の消毒をきちんとしたほうがよいでしょう。後はカットバンを貼って完了です。

● 鼻血。鼻の穴をふさいだり、首筋をたたいたりして出血をとめるのは知らない人がやることです。仰向けに寝かせることもしてはいけません。鼻腔の毛細血管が破れているだけですから、うつむき加減で出るものは流しておくだけで、ほとんどの場合止まります。止まりにくい場合は、鼻頭を押さえたり、氷水で冷やしたりして、血の流れを鈍くするとよいでしょう。服や靴についた血液は乾燥するとなかなかとれません。出来るだけ早く水で濡らして洗い流せば、たいていの場合はきれいになります。

● 虫に刺された。毒が酸性だから、アンモニアなどのアルカリ溶液を塗って中和すればよいと考えるのは早合点です。特にスズメバチは、体質によってショック症状をおこす人がいますから、経過を注意して見る必要があります。氷水で冷やすことで、毒が体内に広がるのをおくらせることが一番です。アシナガバチ、ムカデ、イラガの幼虫など刺されたら冷やすことです。注射筒のような専用の吸引機で吸わない限り、毒を吸い出すことは困難です。口で吸い出すのはむだな努力になります。

● やけど。皮膚の表面だけの軽いやけどなら、痛みが治まるまで水で冷やすことです。肉の部分までやけどしている場合は、痛みを押さえるために水につけて、即病院へ連れていきます。服の上に熱湯がかかった場合は、服を脱がせるより水をかけてさますことを一番に思いつくことです。1秒をあらそう緊急事態だと思ってください。

● とげが刺さる。針やピンセットで取れる程度の物は、抜き取った方が後の痛みを気にしないでよくなります。刺さった物が大きかったり、深く入ったりしていると周囲の筋肉がけいれんをおこして簡単に取ることができない場合があります。これは医師の手に委ねることになります。鉛筆の芯が刺さるということもあります。この場合鉛筆の粉が中に残ると青黒い跡形ができますから、医師の処置を受けた方がよいでしょう。

● 目の中にゴミ。こすったり、ぬぐったりしないで、流水かためた水の中でまばたきさせて洗い流すのが一番です。取れたはずなのにまだ目がごろごろするという場合は、目の表面が傷ついている可能性もあります。手でこすらないようにさせて落ち着かせ、しばらく安静にします。内出血しているようなときは傷が確実についていますから、専門眼科を受診した方がよいでしょう。

● ウルシにかぶれる。かぶれてからでは何も処置することはありません。自然治癒を待つだけですから、予防策をとります。かぶれる体質かどうかを把握しておくとともに、ウルシ、ハゼ、ナンキンハゼ、ヌルデなどを実物で示して、極力さわらないようにします。山の中を歩いているときに葉や枝の樹液が皮膚の表面についてかぶれます。

● つきゆび。瞬間的に無理な力が加わって、関節部分を傷めるのが突き指です。引っ張ったり、ぐりぐり動かしたりすることは傷めたところをさらに悪化させますから、してはいけないことです。内出血や炎症がおこらないように冷湿布をします。腫れがひどくなるようなら、骨折の疑いもありますから、半日程度は様子を見るようにします。

● 骨折。見ただけでぽっきり折れている場合は、まず止血の処置をしてから固定し、外科医に委ねます。剥離骨折などは痛みがなかなか治まらない、動かすと特定の位置で激痛がある、腫れが出てきたというような症状を観察して病院行きです。帰宅してから、そのような症状が出てくることもまれではありませんから、慎重に保護者への連絡をしておくことも大切です。