米の値段

「農林水産物や工業分野での一次製品群などは、どうして市場原理で値段を決めるようになったんでしょうね。」

『生産者が一生懸命作ったり、獲ったりしても売れなければ収入にならないんです。』

「売れてなんぼの世界ですね。」

『高く値段を設定しても、安いほうに買い手は流れてしまうんです。』

「価格協定を結べば公正取引に反するという、買い手保護になっているのが現実ですね。」

『でも、2次製品は違うんです。原価計算から定価、標準価格を設定するのが普通なんです。』

「ものによっては、オープン価格ってのがありますよね。」

『いくらで売りたいという仕切価格はあるんですが、原価割れしないぎりぎりの価格まで自由に設定できるんです。競争相手が多い、在庫に余裕があるなどの製品に限られるんです。』

「内緒で最低の売値を決めてしまうのはだめですね。」

『試しに1次生産者の売り手が米の値段を決めたらどうなると思いますか。』

「たぶん、大規模な農家とか、生産法人がはじき出したら低価格の設定になるでしょうね。」

『たぶん。中小兼業農家はコストが高いですから、倍の値段でも太刀打ちできないんです。』

「労賃、燃料、肥料、種まではいっしょでしょうが、機械の減価償却費の違いが大きいでしょうね。」

『そうなんです。高価な機械でも、稼働時間が多ければコストは下がり、年に数時間しか稼働しない中小農家の機械は高くつくんです。』

「買い手市場の原理をそのまま入れたら、大規模の低コストな米が圧倒的に売れてしまいますね。」

『一方で、作り手が工夫をしても乾燥、籾すり後の玄米になったときは、大半が同一品種でまぜこぜになっているんです。こまめに農薬を使って見た目のいい米も、農薬を控えて見た目が落ちる米もいっしょくたなんです。』

「低農薬、無農薬、有機などの付加価値を持たせるには、玄米生産まで一貫しないとうたい文句の保障はされませんね。」

『なおその上に市場を開拓しないと採算がとれないんです。』

「結局、おいしい米があっても、袋の表示だけでは信頼できないのが現実ですね。相変わらずDNA鑑定の結果、異なる品種や古米の混入した商品が出てますね。」

『ということで、市場原理を生産者原理に近くするのが戸別所得保障制度かな?』

「売買の差額だけですから、売り手市場ではないですけどね。」

『食糧管理法の時代に戻ったようなもんです。』

「生産者にとって赤字売買というのは、労賃に反映してしまいますね。」

『利益が出ないときは、ただ働きになる。工業分野での2次製品とは大きな違いなんです。』

「感覚的とはいえ、ものの価値が決められないと商いは成り立たないのに、ものの価値とは別の相場で決まるのが納得いかないですね。」

『金相場と米相場の決まり方が似ているんです。』

「金だって、鉱山の質や規模で生産単価が違いますよね。」

『ところが、米といっしょで売れてなんぼの世界だから、買い付けた人が値段を操作できるんです。』

「ものを右から左に動かして利益を上げる流れを変えない限りどうにもならないですね。」

『行き着くところは直接取引しかないんです。』

「2次生産品では、だいぶ増えていますね。」

『確かに。ものの価値は売り手と買い手が納得のいく相場で決めるべき。それが商いの原点なんです。』

「買い手が一番強いのですから、米の値段も売り手が付加価値を考えて提供すれば、小口でも大口でも在庫の範囲で売買は成り立つはずですね。」

『そのために、買い手は、今食べている米のねだんが妥当なものかどうかを判断できないといかんです。』

「得体の知れない米を安く手に入れているかもしれないという疑問を持って欲しいですね。」

『売り手は生産者、買い手は消費者。直接取引が本来の姿なんです。』

「1kg150円で買いたたかれた米が、店頭では倍の値段。」

『魚もいっしょなんです。』

「だれが美味しいところだけかっさらっているか買い手は気づくかな。」

『まともな商いがされるよう願っています。米をはじめとして、まともでない商いが多すぎるんです。』