無用の長物

「くらしの中に入り込んだものの中からいらないものを消すと本当に値打ちのあるものが分かりそうですね。」

『たぶん1960年代以前のくらしになりますよ。』

「テレビはなくなっても大丈夫ですね。」

『私も困らないです。ニュースは新聞のスピードで十分です。ニュースが何も入らないと世の中の変化についていけませんから、最低,新聞かラジオは確保したいな。』

「それに何もないと日にちが分からなくなりそうですね。」

『ごもっとも。マスメディアの中で新聞、ラジオ、テレビの順番で登場していますから、逆戻りで十分ついていけるはずだ。』

「テレビが一番拘束時間が長いですからね。」

『必要なときに必要な情報が得られないのは確か。送り手の意図に合わせるしかないから、弊害も大きくなったと思いますよ。』

「伝達コストからいえばインターネット配信の方がよさそうに思うけど。」

『これは条件整備に格差があるから、まずい。津々浦々までという条件では新聞が一番かな。それでも1日遅れというところもあるから。』

「そうかぁ。固定電話なら必ず確保できると思ったけど、万全ではないんですね。」

『電話も固定と携帯に分かれるけど、電話は本当にくらしの中で必要不可欠かな。』

「なかった時代からすると、何が大事な役割でしょうね。行き着くところは緊急通信手段?」

『条件整備の目的はそこにありました。採算とれなくても電話線引っ張ったんですから。』

「ないよりは安心できますね。必要不可欠かといわれるとそうでもない。」

『どこでもつながる通信手段としては、携帯端末より固定回線の方になるだろうな。』

「ただ、重要な連絡はごくごくわずかでしょうね。年に一回あるかどうかです。」

『電話や電報がないときは手紙、手紙の前は対面して話すしかなかったんですから。』

「携帯取り上げられたら一大事という高校生の話は、肝心なことを失っていますね。」

『価値観が貧しいと思いますよ。これじゃ世の中渡っていけません。仕事もできません。』

「次、車はどうでしょう?」

『電車が走っているところはいらない。バスだと本数が極端に少ないところもあるんです。』

「物流だって大急ぎで届かないと困るものは限られていますよね。でも、時間もコストの内になっていますから、無駄な動きは多々あるでしょう。」

『環境負荷を一番に考えたら、今よりはのんびりペースでいけますよ。東京大阪間が3日かかっても影響が少ない荷物は多いですよ。』

「電気だって必要不可欠と思いながら、なくなってもいい物はたくさんありますね。」

『夜が明るすぎます。夜は大半の人が寝ているんですよ。もっと暗くていい。』

「便利さと引き替えに無用の長物がはびこってしまい、大切にしたい物を見失ってますね。」

『スローライフ、ロハスなどの言葉だけが先行することなく、やっぱり価値観を問い直す時期ですよ。』

「和食に目を向ける外国人、技術に目を向ける外国人、捨てそうになったものを日本の外から教えられていますね。」

『ノーと言えなくてもいいと思うんですよ。いるか、いらないかが分かれ目です。』