不景気風

「石油高騰から一気に値下げ、サブプライムで株価もドルも安くなりマスコミは煽る材料てんこ盛りですね。」

『100年前の世界大恐慌とは異質な事態ですよ。冷静かつすばやい対応をしていかないと混乱します。』

「何でこんなことになるんですかね。」

『安定なドルの神話にのっかって、債務を日常とするアメリカ経済の行き詰まりです。景気が安定なら借金は怖くないという自信から転落したんですよ。』

「大きな変動には対応していないということですか。」

『大幅に値下がりしていく通貨や株は買いません。底値になるまで、控えてしまうんですよ。』

「確かに。土地バブルのころ日本も投機資金が流れ込んで、ころあいを見て引き上げていきましたね。」

『今回の引き金は、原油価格のつり上げにつぎ込まれ、サブプライムの不良債権があやしくなり出すと一気に引き上げていったわけです。稼げるだけ稼いじゃった。ツケは銀行に残ってしまうんですよ。』

「変なことに円が高値になってしまうんですね。」

『ドルだてで稼いでいる業種は、大幅に目減りしますよ。先方では、実質値上げですから、売れない。不景気で収入減だからなお売れない。輸入する業種はホクホクですよ。』

「ということは、投機資金が暴走すると大混乱になりますね。」

『そうなんです。紙切れというか、数字だけがバランスよく行き来しているうちはいいんです。債務が増えると実質動かせる金が減りますから、資金不足を招いて破綻します。借金の棒引きを税金で行い、投機資金が正常に動き出すのを待つしかないですよ。』

「結局みんなにツケが回るわけか。」

『そういうことです。自治体の借金だって結局は納税者にツケを回すことになります。金融の世界だけが不景気になることはあり得ないことで、即、失業が次の不安を招いていますよ。』

「不安定雇用のおいしさは右肩上がりのときだけですね。」

『単純に失業者が増えていると考えるのは表面的な見方です。そもそも仕事は、中身と待遇で決まるものです。就業の機会が全くないというのなら完全失業ですが、今の状態はちょっとちがいますよ。』

「仕事はあるじゃないかという指摘ですね。」

『そう。探そうと思っても求人件数が一つもないということではない。』

「だから、働く気があるのかと公言して物議を醸すわけですね。」

『失業した人は、求職側の条件に柔軟に対応できるかという問題をはらんでいますよ。』

「とにかく仕事をしなければという気持ちはあると思いますけど?」

『定住、定職に進む条件を持たない人は最悪です。法的な存在を失っている人もいるんですよ。』

「待遇の意味を理解していないから、そんなことになるような気がしますね。」

『考えが甘いということはありそうです。定職の月25万円の可処分所得と臨時雇用の同額、派遣社員の同額、それぞれ待遇が違うことが分かるでしょうか?』

「定職が一番たくさん収入を得ていますね。」

『そうなんです。同額ではないということに気づかないと生活破綻の道にはまることさえ気づかないですよ。』

「低所得が不安定雇用から抜け出せない悪循環は以前からありますね。」

『解決の道筋はそこにあります。脱出できる条件整備は不十分なだけに解決しにくい。』

「雇用対策を迅速にしないと、悪循環にはまる人が増大しますね。」

『後手後手になれば、税収も落ち込み、さらなる不安定がおそってきますよ。』

「それにしても理解できない対策が出ていますね。」

『というと?』

「後継者不足の農業に就労すればいいのにっていう話。」

『遙か彼方にある価値観が到来すればまんざらでもない案です。』

「そうかなあ?うまくいかないと思いますね。」

『今の状況では無理。』

「これだけ消費生活に慣れきっている人が多い中、生産生活に生き甲斐を感じる人は少ないはず。」

『定住人口のアンバランス、定職人口のアンバランス、年齢別人口のアンバランスの中で生き残りをつきつめれば、価値観も変わってくると思いますよ。』

「究極は命をどうつなぐかということですね。」

『そういうことです。このまま放置すれば、命がとぎれるところは増大ですよ。』

「村の消滅、家族の消滅・・・。」

『ということになるんです。』