ネットID
「個人情報保護の話が氾濫している中で、逆に個人の認証が簡単にできなくなっているような気がします。私が私であることを私自身が証明してもだめな世界になってきましたね。」
『どうしたんですか?』
「自分の通帳と印鑑をもっていって、機械で扱えない金額を送金しようと思うと免許証とか保険証とかコピーを取らせてくれと窓口で言われますよね。自分が自分のものを動かすのにどうして自分であることを証明しろと言われなくちゃいけないの。」
『証明しないと信用されない。一見保護されているようで、目の前の本人が軽く見られていると。』
「なりすましをふるいにかけたいのなら、IDカードを持つしかないんでしょうかね。クレジット、キャッシュいずれも不完全ですけど、IDカードみたいなもんですからね。」
『個人の識別情報の管理はビジネスになっていってますよ。』
「行き着くところは指紋認証、静脈認証、DNA認証になっていくんでしょうね。」
『金融機関のネットから架空名義、なりすまし名義を排除しようとしていますが、なかなか至難のことですよ。名義を売買する抜け道まで手が回っていないのが現状。』
「インターネットになると端末を操作する個人を特定するのはさらに困難。自由自在と引き替えに危険も承知の上の世界になっていますよね。」
『固定電話も似たような運命をたどっていますよ。』
「最初は名義人の名前と所在は知れ渡っていたのに、やがて架空名義が増え、悪用ですね。」
『携帯電話は、もはや電話ではなく、携帯端末。架空になったり、個人が特定できない汎用性のものだったりすると悪事には便利な道具だ。』
「ネットワークの世界では秘匿性を排除しない限り信頼回復は望めないですね。だれがやっているか分からないから、したい放題になってしまう。個人情報は保護されても、個人の特定がだれにでもできないと闇の世界がはびこってしまいますね。」
『ということでネットIDが必要だと。』
「識別可能なIDを表示したり、アクセスログに記録させたりすることで、闇ではない部分と塗り分けられるはずです。」
『インターナショナルなIDにするかどうかは別として、日本が先駆けてJP_IDでいいじゃないですか。』
「独自のIDで認証して会員登録で管理しているサイトは数多くありますが、登録内容が架空であっても発覚するまでは使えるところが多いですね。なりすましも可能というわけです。」
『不正を必要とする人が確実に排除されるためには本人が特定できる情報を管理して、IDを発行するのが一番手軽だけど、これまた盗難、なりすましが起こらないとは限らない。本人が閲覧すれば発覚しやすいものの、気づかなかったということもあるでしょう。』
「要は今のように管理者だけに責任を負わすのではなく、利用者にも秘匿性を排除する覚悟がいるんですね。」
『匿名で公開しても、管理者に個人が特定できないと悪意は排除できません。』
「自由に書き込める掲示板の中には、悪意に満ちた書き込みがあったとき、削除と書き込みのいたちごっこですからね。」
『ロボット書き込みができにくくなると小遣い稼ぎがてら書き込みを請け負っている人間がいる。落ちるところまで落ちているんですよ。』
「電話番号はデジタルになってから、かけた人が番号を通知しなければ拒否できる設定がありますよね。」
『同じことですよ。端末であってもアクセスした人が正体を明かさないと受け付けないようにするだけです。』
「確かに配信専用に設定したメールサーバーは、管理者に連絡できないようにしておけば悪用には便利でしょうね。」
『ダイレクトメールより安くつく分のさばっているんです。接続サービスで入り口を提供するところも中身までは規制できず。相変わらず大量のばらまきが続いています。郵便物同様、いらないものを拒否できる仕組みを作るためにもIDは必要でしょう。』