食糧難
「自給率の低い日本は食糧難の心配はないでしょうか。」
『いつとは言えないにしても、大いにあり得ますね。』
「人口増は心配ないと思いますが、食糧難になる根拠が何かありますか。」
『気候変動と天変地異は可能性が高いです。特に気温上昇は、未経験のことですから予測できません。』
「予測不能といえども予想はできますか。」
『気温が上がることで、これまでの作物が不作になっていくかもしれません。それと、洪水や干ばつなどで収穫量が激減することも考えられます。近ごろ雨の降り方は尋常ではないです。熱帯雨林のスコールなみですよ。』
「対策はあるんですか。」
『今のところ地球温暖化対策は本腰入れていないです。米以外の主要穀物は、輸出国任せ。自前の米だって備蓄はあやしい。ようやく何とか増やさなくてはと考えだしたぐらいですかな。』
「廃棄食料は問題にしないのですか。」
『はるか彼方です。消費者にいいものを届けるという発想じゃないと思いますよ。品揃えを豊富にし、品不足を避けることでお客さんを繰り返し呼び込もうという作戦ですからね。』
「何でそんなことになるんですか。」
『そこそこの品質で、安ければ利潤は上がりますから、必要量以上に買い付けていますよ。中には、B級品以下のものがあっても口にする人が気付かなければいいというのが現実ですね。』
「じゃ、まずいものも食わされているんですか。」
『そういうことです。売れ残りの多くは捨てています。これだけしかないという商いは圧倒的に少数派なんです。』
「手に入る間はいいけど、完全に輸入食料が止まったときパニックにならないんですか。」
『日本人は食に対して実に柔軟ですね。マグロが品薄になっても困らない、牛肉の輸入が止まっても困らない、小麦の値段が上がっても困らない。一番困っているのは外食業界だけなんです。パンがだめなら、ご飯にすればいい。牛肉がないなら、鳥でも豚でもいい。エビやマグロが幻の食べ物になっても、毎日それを食べてるのではないから、なくてもいい。米が足りなくなって初めて危機感が実感できるでしょうね。パンや肉,牛乳は政策的に消費をあおった経緯があります。』
「食べ物が店から消えることはないんですか。」
『世界各地で不作が続いたら消えるものが多くなるでしょう。それぞれの国が自国の食糧確保に走れば,輸入国はお手上げです。すべてなくなるようなことがあり得ないとは言い切れません。』
「不安がよぎりますが,何かいい手はありますか。」
『まずもって廃棄食料を減らすことですね。あとは、生産者を増やすだけ。自分の食料を自分で作れば、自給率も上がりますよ。食糧確保と教育は国の基本です。』
「売り手も、買い手も価値観が変になっていませんか。」
『自分で作らないと意識は変わらないと思いますよ。これだけしかない、こんなものしかない、だけど食べられますということになればいい。戦時体制でそういう状況を過ごした人は、理解できることなんです。』
「おしんの話みたいですね。国は大規模経営の対策を打ち出していますが、大丈夫ですか。」
『能率的な耕地が限られているのにうまくいくとは思えませんね。日本は、元々せまい土地を多くの人間で耕作してきた土地柄です。』
「小規模経営のすぐれたところは農業にも工業にもあるのに切り捨てられていませんか。」
『同じものを作ればコスト競争に負けてしまう。競争しないものを作れば負けることもない。なのに、独自の製品がずいぶんと買いたたかれてきました。生き残るためにがまんしてきたと思いますよ。』
「国のいうとおりにしていてはいけないということですか。」
『意見が分かれるところです。すべて、正しいと思いこむと大変なことになってしまったことが数多くありますからね。直接生産に携わっている人の意見が反映されるかどうかです。』
「正しいかまちがっているかは、そこで生活している人が判断することになりますか。」
『食料は1か月、2か月で増産できません。食糧難に耐えられるくらしを自らが描いて実行していかないとね。人を当てにしていては生き残れませんよ。』