家族

「不登校、いじめ、発達障害、校内暴力、不払い、理不尽な要求・・・こんな問題と全く縁がない学校があるんですね。」

『何十年も前の話ですかいな。』

「いえいえ、現実にあるんです。」

『それはちょっと驚きですな。』

「というふうに受け止めていただけると話したくなりますね。」

『もったいぶらずに、何でそんな天国みたいな学校があるか教えなさいよ。』

「取り立てて特別なことをしているわけではないんです。」

『普通の暮らしだというのですかいな。』

「そうなんです。当たり前のことが普通にできているだけですね。里山の普通の暮らしです。」

『それだけで、天国みたいな学校になるのかいな。なんか隠されたひみつがありそうだよ。』

「強いていえば、ほとんどが三世代、四世代が一つ屋根の下で暮らしていることぐらいですね。」

『今日日のこと、親子だけの家族ってあるでしょうが。』

「あります。あるけど離れていないんです。近くにいるから、毎日行き来ができる。」

『里山で、三世代の家族が暮らしていたら、なんで天国みたいな学校になるのか、分からんなぁ。』

「団地やマンション住まいではあり得ないことがいくつかありますね。」

『隣近所が知らん顔ではないと。』

「そうですね。地域のコミュニティが機能しています。」

『米作りをするための村落共同体の縛りが残っているわけだな。』

「逆に考えるんです。気ままに自分勝手なことしないで、協力し合える隣近所なんです。」

『それが子育てにも関係するのかいな。』

「地域の人が子どもを見ていますし、祖父母も子育てに深く関わっていますからね。」

『家庭教育が途切れていないというわけですな。』

「そうなんです。両親が働きに出ていても、祖父母の目があるからしつけが行き届く。しつけができていれば、学校でわがままを言ったり、自己中心的に振る舞ったりしない。」

『暮らしの中でのルールが生きていれば、はみ出す子どもも少ないでしょうな。』

「だから、下界の学校は大変になる。家庭や地域でしつけられていく社会性の勉強を学校が全部背負い込んでいますからね。」

『三世代同居はいいとこあるんだな。』

「見えにくい部分として、経済面で無駄が少ないというよさもありますね。」

『それぞれの世帯が好きなようにやれば、節約するところは少ないでしょうな。』

「米を作って、野菜を作って、一つ釜で煮炊きすれば効率的なんですね。自給しているところが必ずあるんです。」

『でも、慎ましい生活はいやだとか、金持ちになりたいとか、にぎやかな都会の方がいいとか、そんな人も出てくるでしょうが。』

「そういう人は、出ていくと戻ってこないですね。子々孫々の家族が途切れちゃいます。」

『つまり、里山の慎ましい生活を捨てた結果、村がなくなるってことか。』

「天国みたいな学校も維持できなくなりますね。」

『いじめ、不登校・・・もろもろの問題におびえながら、人より一段でも上を目指せという学校ばかりになったら不幸という以上に、大きな損失ですな。』

「命をつなぐ家族と人が助け合える共同体があれば天国みたいな学校は確実に増えますね。」

『ということになるか。ところで、天国みたいな学校の子どもたちもゲームに関しては例外にはならんでしょうな。』

「例外なくはまっていますね。」

『違うとすれば、家庭教育の歯止めがあるということか。家族の教育力は影響大ですな。』