美味しい酒
「おいしい酒ができるのに、どうしておいしい酒が飲めないのでしょうか。」
『おいしい酒はいっぱい売られているのに何が不服なの?』
「例えば、本物のビールとまがいもののビールが売られていると、やむを得ずまがいものを口にすることもあるんですよ。」
『酒税法をかいくぐって格安を売りにしたまがいものビールは作らなくてもいいものだとでもいいたいわけ?』
「もののない時代に酒粕に醸造用アルコールを混ぜて売っていたのと同じようなもんですよ。」
『麦芽とホップを使っているからビールであって、トウモロコシの粉や米を使ったものはビールとはいえない。発泡酒が登場する前にもまがいものはありましたからね。』
「価格競争の餌食になって本来のおいしいものが影を潜めるものは数多くあるけど、まがいものが当たり前になるのが怖い。ものの値打ちをおとしめますよ。」
『何でそんなことになるの?』
「やっぱり酒税法が足かせになっているんでしょうね。ガソリンや軽油だって悪用されてきましたからね。」
『軽油にかけられた揮発油税を逃れるために灯油を混ぜて売ったり、揮発油税がかからない燃料を硫酸で精製してまがいもの軽油を売ったりするのは税金を逃れて荒稼ぎするわけだ。違法と知りながら、金に目が眩んでいる。』
「税に税をかけて、払った値段のうち、税額が占める割合が多いから、とる方もとられる方も抜け道探ししているみたいですよ。」
『まがいもの軽油は違法、発泡酒は適法。安物を手にして損をするのは消費者。何か変です。』
「ひところの輸入ウィスキーやブランデーはずいぶん高額でしたからね。」
『輸入したときに関税がかかって、酒税が追加され、売り渡すときに消費税がかけられる。そりゃ、高くなりますよ。』
「高級品だからいいじゃないかと長年続いていましたけど、さすがに原産国は不愉快だったみたいですね。」
『関税と酒税が下がって今はずいぶん格安感がありますから、奇妙なことです。』
「つまり、税に振り回されておいしい物が適正に手に入らなくなっている現実があるわけですよ。」
『清酒の売れ行きが変わってきたのは一律に税をかけるようになったあたりからではないかな。』
「そう。アルコール度の最低基準だけで、蔵元がおいしさで値段を決められるよいうになった。」
『結局、税収が落ち込むとどうでもよくなって大ざっぱにできるわけだ。』
「とれるところから、税を取るの典型ですね。おかげで、まずいものを流通させちゃった。」
『酒でもガソリンでもすっきりしてほしいですね。』
「1リットル80円のガソリンに50円の揮発油税と5円の地方道路税をのせる。消費税は本来の価格に5%をかけ4円。139円を消費者は払い55円の税負担をするほうがよっぽど納得できます。今のやり方だと142円だ。」
『相変わらず、税金は納めているという感覚ではなく、とられているですからね。』
「税金の話に変わってしまったようだけど、本題の美味しい酒はどうしてできないかです」
『酒造りという文化を税法で規制しているからおかしくなる。』
「多くの発酵食品が規制されていない中、酒や味醂は自由に製造販売できませんからね。」
『嗜好品なのに、美味しいものをだれでも自由に追究できなくなったことは確かです。』
「タバコ同様の規制ですからね。」
『いずれも場合によっては、世の中で悪者にされる嗜好品ですから、こうした規制も役に立っているかも。』
「美酒は文化なんだけどなぁ?」
『個人で楽しむ以外は違法です・・・何てことにはなりませんよ。』