うそ・ほんと
「裏金、捏造、やらせ、虚偽報告などなど、芋づる式に話題が続いていますね。」
『ばれないように考えて実行したのに、ばれてしまったという思いでしょう。約束事を無視して事実を曲げるんだから、どこかでつじつまはあわなくなるぞという見通しは甘い。』
「間違いではなくて、だましていることになりますよね。」
『間違いは、ごめんなさい間違えていました、ですむ。だますときは、本当はこうなるんですけど、こっちの方が都合がいいと判断している。でも、だますつもりはなかったと言い訳するんだな。』
「詐欺と紙一重ですね。だますつもりがはっきりしています。」
『情報の受け手が受け身になりやすいことを利用しているんだから、大差はないかも。』
「だまされないようにするには名案がありますかね。」
『本当のことを知っている人はだまされない。知らない人はだまされてしまう。どっちかですよ。』
「知っている人はおかしいと気付くんですね。」
『圧倒的に知らない人の方が多いのが現実。構造計算とか、計測値とか専門知識がないとお手上げのものもあります。専門家ほど信用に対する責任は大きいと思いますよ。』
「そりゃそうですね。論文の捏造なんてのは、だますことよりも信用失墜の方が大きい。地位も名誉も白紙になりますね。」
『信用に金目はつけられませんよ。』
「確かに詐欺をする人は信用なんて考えませんね。うそを信用させられるからうまくいってしまう。」
『だから、常識の範囲でおかしいと気付く力は必要だと思いますよ。』
「応募もしていないのに当選しました、っていう通知ですね。」
『やせ薬だって同じですよ。』
「テレビを見ていても、できすぎた話ってのは結構ありますね。」
『この話はつくりごとで、実在しませんという番組もあれば、これが真実ですと主張する番組もある。ドラマ、ドキュメンタリー、娯楽、報道、教養と色分けできない複合した番組もある。送り手の責任は、もちろんのこと、選んで判断するのは受け手なんだという考えが必要ですよ。』
「鵜呑みしちゃいけないんですね。」
『ほんとかな、そんなうまい話があるわけがない、なんかうそみたい、これは煽っているな、やらせだな、都合のいいところだけ出しているな、と読み取って判断するのは自由ですよ。』
「インターネットだっていっしょですね。」
『検索と引用の繰り返しで、ほんとかなっていう情報が広がるのはわけないですよ。』
「だますつもりがあるところは、隠しデータがありますね。だますつもりがないところでも、情報の出所が不明なことは山ほどありますからね。」
『インターネットのサイトはこれまでのメディアとちょっと性質が違う。』
「デジタル信号という点ではテレビや携帯電話と同じですが、文字、写真、音、動画が別々のデジタル信号としてあり、画面上に合成していますよね。」
『だから、隙間に隠しやすい。引用がしやすい。テレビは一画面ごとのデータですから簡単にはいかない。』
「情報の信頼性は、結局、紙上出版が最も確かということになってしまうんでしょうかね。」
『動き回る画面とはわけが違います。固定した状態で多くの目に触れますし、改ざんされませんから。』
「虚構の世界に浸る楽しさを知っている人間だけにうそ・ほんとの世界は魅力的でもあるし、落胆もしやすいでしょうね。」
『偽物を見抜く力は、知るしかない。鑑定の仕事みたいです。』
「何でも鑑定団が流行るのもそのあたりの事情でしょうね。」
『そのうち、信用保証を商いにする会社が登場するかも。』