下から見た格差

「所得の低い人が這い上がれない格差が、不安材料として拡大していると思いませんか?」

『人員整理が急速に進んだころから、安価な労働力で利潤を上げようと逆行したのだとと思いますよ。』

「横文字でごまかされたのかな?」

『う〜ん、リストラ、フリーター、ニートぐらいしかないですよ。飛びついたのは派遣労働のやり方ですね。』

「最低賃金があるから、逃げ道としては正規雇用しないで雇用者側の負担を減らしたのかな?」

『条件が整っていなくても収入を求めて働き手がいるからできたこと。発展途上の状態にもどってしまったといってもいい。』

「賃上げのストライキも打てない、食いつなぎの資産も持てないとなるとひたすら働くのみ。」

『つまり逆行でしょう。ほら、働けども働けども我が暮らし楽にならざりけりの世界ですよ。』

「臨時雇用を利用すれば、実質賃下げ効果が得られると目論んだわけですか?」

『雇用保険、健康保険、年金保険は働くあなたが負担しなさい。短期雇用なんだから、正規雇用のような諸手当は出ませんよ。それでも失業状態よりはいいと思うんですね。』

「格差から這い上がれない社会は、長続きしないと思いますが?」

『年功序列賃金が崩れ、退職まで御社に忠誠を誓う働き方を崩したとき、勝ち組はいいとしても、負け組が這い上がれる仕組みは話題にしなかった。』

「交換条件を示さなかった国が手を抜いたとでも?」

『公務員には負け組というとらえ方に実感がないでしょうね。不始末をしない限り、負け組になることがないんですから。』

「正規雇用と似たような負担を求められると安上がりの逃げ道はなくなるのでは?」

『奥の手は、短期不連続雇用しかないでしょう。』

「労災保険なみに他の保険も雇う側に義務づけたうえで最低賃金をはじいたらよくなりそうですが?」

『困ることは一つだけ、保険納付を雇用者にするのか、本人にするのか。社会保険の仕組みが足かせになってしまいます。』

「自営の道を行くか、被雇用の道を行くか、働いて収入を得た人は負担の義務があるという仕組みをつくるしかないと。」

『健康保険は個人個人でという仕組みにしている国と日本を比べるわけにはいかないんですね。共通しているのは、這い上がれない人はやはり格差の底辺を担っています。』

「賃金だけをいじってもあまり期待はできないかも?」

『生活のどの部分に手厚く消費していくかは個人個人違いますよね。社会保険の負担は個人にとって必要順位が低いでしょう。』

「最低賃金、税金、生活保護はつばぜり合いをするところにいますが、社会保険は宙に浮いていません?」

『収入ぎりぎりの人が健康保険、年金保険を自分の収入で賄うとかなり厳しい暮らしになるでしょうね。家賃に5万も払うと生活は立ち行かなくなるはずです。』

「臨時雇用が増えれば増えるほど、三大保険は危機的状況になると。」

『と思いますよ。だから賃金だけではいかん。社会保障も含めてお金を配分しないと看過できない格差を放置することになります。』

「それはそうと、公務員には雇用保険がないとか。」

『そうなんです。おおもとの仕組みを作る人に負担感がない。』

「本当に雇用保険が必要なのは、臨時的に働いて生活を維持している人なんです。少しでも世帯収入を増やしたいという働き手と同じ扱いになっている人が這い上がれないんです。」

『それ以外にいくつか、心配の種があるんです。』

「というと。」

『為替レートの低い海外から入ってくる労働者です。』

「応分の負担を仕組まないと正規雇用者の負担感は増大しそう。」

『格差の増大は治安とも連動しますよ。』

「歴史は繰り返すの通りじゃないですか?」

『はい。本気で考えて現状を変えないと、えらいことになりそうです。』

「不足を消費税でという話もあるみたいだけどどうなの?」

『公平なようで、結局は二重のしわ寄せがどこに行くかはっきりしていると思いますよ。帳尻だけあって、根本的な解決にはならないと思いますよ。』