情報過疎

「情報過疎ってのは、インターネットの整備遅れだけかと思ってましたが、どうも変ですよ。」

『人口密集地以外は、高速化が進みにくいってのは商いの理屈ですからね。それ以外にもあると。』

「それがですね、図書館や図書館の蔵書数にだって情報過疎が起きてると思いませんか。」

『図書館は中央集中だし、学校の図書室だって貧弱なのは確かですね。本屋さんも減っちゃった。』

「テレビの映像文化にならされ、読書離れが進み、飛ぶように売れない貴重な本は手に入りにくくなり、人口の集中度とは関係なく過疎化が進んでいますよ。唯一、新聞業界だけは健在ですな。」

『テレビやインターネット情報で、文化のレベルが上がるほど質は高くないですね。情報としての価値より、商いですからね。売れてなんぼの世界ですわ。』

「情報の信憑性や専門性、言葉の厳密性や一貫性という点では単行本の情報価値は高いと思うのですが、少数派なんでしょうな。」

『テレビも娯楽に走る傾向はすたれていませんが、中には優れた教養番組もわずかありますね。でも、見ている側に受けるかどうかという下心はあるなぁ。受けないものはあっさり切り捨てられる。その辺が単行本と違うかな。』

「テレビ界も出版界も文化を伝承する誇りと商いを秤にかけざるを得ない。誇りを捨てると情報過疎になるんですよ。送り出す方もいいものを切り捨てる、受ける側もお金をケチる。」

『救われるのは、読みたい本がインターネット経由で数日後には手に入るというよさは確保されてますね。大きな書店に行ってもないものが簡単に手に入るんですから、結構なことです。ただし、町の本屋さんの受け皿になったものの、誰にでも提供はしてない。』

「興味のある人はいいかも知れない。でも、通りすがりの人には決して届かないですよ。新聞のようなポリシーが維持されていればいいのですが、意図的に知りたいことを知らせない動きは入りやすいでしょう。」

『本をちゃんと読んでいる人、あるいは、活字文化にしっかりふれている人は、言葉が乱れにくいと思うんです。一人の専門家が責任を持って言葉を選んで書いている本がほとんどですからね。暇つぶしの娯楽テレビを見ている人には言葉の厳密さなんていらないですからね。』

「話を元に戻して、情報過疎の典型みたいなのは災害情報でもいえると思いますよ。」

『大震災の時だけではなく、ちょっとした災害でも当事者にとって必要な情報が伝わらないと・・・。』

「高速道路の突然の渋滞のとき、先頭部分で何が起こっているかつかめないもどかしさ、これが情報過疎なんですよ。」

『報道はやけに事実を伝えることだけに忠実ですからね。責任あるものが予測と判断を情報として提供できなければ情報の重みがなさそうだね。』

「災害現場の生中継をしても野次馬と変わらない解説しかできないのならないほうがましですよ。」

『想像してみてくださいな。電子メールだって、インターネットだってどうでもいい情報が大量に電線や電波で行き来しているんですね。お互いに必要としている確かな情報はごくごくわずかでしょう。』

「デマはいけませんが、責任を持てる個人が真面目に予知や予測、判断を情報として流すのは情報過疎を回避する一つの方法になりそうですよ。」

『必要なことを知らせるけど、予言者はいらないということですね。』

「紙一重が難しい。」

『知りたいというのが、そもそも能動的な動きですから、知らせてくれなかったというのは通用しないですね。』

「知りたいことが知らせられていない情報過疎に気づかなくちゃいけない。」

『となると、やっぱり言葉に対して厳密な反応ができることが求められる。情報過疎になるとそこが根こそぎうやむやにできるわけだ。』