乱れ言葉

「テレビを見るたびに気になる言葉づかいがあるんですよ。」

『小気味よく、字幕までで出していうことなさそうだけど、ありますか?』

「まず、ブィティーアール、VTRの使い方が変です。」

『取材した録画のことでしょ。』

「そう言えばいいのに、どうしてブイティーアールなの?」

『ビデオテープレコーダーの省略だよね。うん?意味が違う。』

「でしょ。電子映像をテープに記録する機械のことですからね。」

『百歩譲って、ビデオテープレコードなら近い。』

「それなら電子映像をテープに記録したものに変わる。」

『ビデオが出始めのころ、VTRといえば、レコーダーでした。』

「非常に違和感があるんですね。」

『そのうち、メディアがDVDになったら、つじつまが完全に合わなくなりますよ。』

「録画という明解な言葉があるのに、VTR。ああ、耳障りだ。」

『で、次は?』

「タイヤがはずれるっていう報道を聞いたことない?」

『普通に聞き流してたけど、変ですか?』

「だってね、タイヤがはずれたんなら、バースとしたってことじゃないの。」

『車輪がはずれたといいなさいと・・・。』

「そういうこと。」

『ハブ軸が壊れてはずれたのは、タイヤじゃなくて車輪だ。』

「ハブナットが吹っ飛んではずれたのも、タイヤじゃなくて車輪だ。」

『車輪を構成する部品の一つにタイヤがあるというのが正しいですよね。』

「だから、変なんです。」

『どっちでも使える場合があるけど。』

「例えば?」

『パンクしたときはどうですか?』

「タイヤがパンクした。言いますね。」

『前輪がパンクした。これも使いますね。』

「前輪のタイヤがパンクした。これが一番正確か。」

『タイヤがはずれると車輪がはずれるはどちらでもいいとはいえないわけだ。』

「おまけにもう一つ。画面に文字が出るようになって、ありがたみは増えたのですが・・・。」

『何かまずいことでも?』

「気になるのが、意図的に助詞をはずしたり、言い換えがあるんですよ。」

『特に抜けているのが「を」ですね。』

「助詞がうまく使えない、片言言葉になっているのはどうもいただけないです。」

『気にし出すと違和感あるでしょうね。』

「文意を読み取るのに大事な助詞は省かんといて欲しいな。」

『言い換えでは、インタビューを受けている方は正しく敬語を使っているのに、正しくない方に変えているのもありますね。』

「たくさんの声援をいただきうれしかった・・・と言っているのに、文字面では声援をもらってうれしかった・・・に変わっている。拙いですよ。」

『皆さんも気を付けていただきたいです・・・なんてのは?』

「皆さんも気を付けてあげてください・・・になっちゃう。」

『わざわざへりくだっているのに、変ですよね。』

「影響力の大きいところから乱れちゃいけません。責任を痛感して欲しいな。」

『本当の意味での文化人は大切にしたい言葉をていねいに使っていると思いますね。』