チョコレート
「バレンタインデーが近づくと違和感を覚えますねぇ。」

『何か気になることでも?』

「チョコ騒ぎがうっとうしいんですよね。」

『そりゃまた、どうして?嫌いなの?』

「それもある。甘いものが苦手だとプレゼントされてもありがたみがないんだなぁ。」

『なるほど。チョコもらっても、チョコはどうでもよくなるわけだ。』

「気持ちの問題といわれれば、確かにそうなんだけど、作られた風習ですからね。」

『雑煮、クリスマスケーキ、太巻き寿司、鰯の塩焼き、ぼた餅、おはぎ・・・。ちょっと記憶をたどっても、これぐらいがすっと出てきます。』

「チョコはクリスマスケーキといっしょでしょ?」

『風習といっても営業のためにこじつけちゃったということだ。』

「陳腐なクリスマスケーキは、さすがにすたれつつありますね。」

『でも、完全になくならないということでは、根強さを感じます。』

「それにしても、チョコのほうはまことしやかでねぇ。」

『義理チョコ、ホワイトデーまで作ちゃった。』

「義理とお返しの考えは、まっこと和風のおつきあいなんですよねぇ。」

『ホワイトデーなんて、お菓子屋さんの作戦が見え見え。』

「好感度をチョコやマシュマロに置き換えても意味ないじゃん。」

『きょうび、手作りチョコとプレミアチョコが幅をきかせているそうで。』

「出発点に帰ろうとしているところは認めるけど、なんか変。」

『告白、チョコ、バレンタインデーという3点セットが意図的すぎるのかな?』

「そうっ。日本中のあちこちで、一斉にそういう動きがあることが変。」

『相手に対しての思いを型にはめた行動で示すのは陳腐でしょうね。』

「比較的歴史が浅い太巻き寿司のほうはそういう意味合いは込められてないですからねぇ。」

『信じるものは救われると。』

「そうっ。」

『日本中の人が太巻き寿司を南東の方に向いて頬張っている姿は、笑いあるのみ。』

「信じている人は真面目にやってるんだな。」

『みんなしているから、あやかってやりましたというのは、笑いあるのみ。』

「自分の考えを示すときは、自分らしさを出すのがいいなぁ。」

『花言葉を沿えて、一輪の花をプレゼントなんていかがです。』

「いいなぁ。」

『甘いものが好きなお二人さんなら、とっておきの美味しいケーキをってのも。』

「それもいいなぁ。」

『話すのが苦手なら、手紙を書いてもいい。』

「いいじゃない。」

『何でチョコなの?何で2月14日なの?何で女性からなの?って立ち止まってみると気づくかな?』

「そういう冷静さがあってもいい。」

『たかがチョコ!空騒ぎで楽しめばいいと割り切れるのならそれでもいい。』

「何を大切にしたいかだけは見失わないでほしいですね。」

『どっちにころんでもお菓子屋さんだけはニンマリなんです。』