子どもの安全
「下校中の子どもが相次いで襲われ、日本の安全神話もずいぶん落ち込んできましたね。」

『世の中の変化とはいえ、犯罪の形態も変わり、ものに対する安全神話さえ揺らいでいますよ。』

「安全より利益が優先した結果一大事になった脱線事故、耐震性をごまかしたホテルやマンション、アスベスト野放し、車のリコール隠し・・・。次から次へと出てきますね。」

『人為的な事件だけに、日本人が持っていた謙虚な正義感は忘れ去られ、自己中心的な考えがここまで蔓延っているんですよ。』

「大局的にみると、人の安全も自己中心的な考えが不安材料を増幅させていますからね。」

『月光仮面や西部劇の保安官の登場を期待するような世の中ではないし、教育に力を入れて人づくりを立て直せというほどにのんびりと構えるわけにもいかないし・・・。』

「常に社会的弱者がターゲットになることだけは確かです。男性よりも女性、大人よりも子ども、男児より女児というふうにね。企業だって、2番手3番手の後を追いかける会社が庶民を犠牲にしてのし上がろうと目論むところに落とし穴が出てきてますね。」

『子どもがねらわれる犯罪は営利誘拐というのが昔の筋書き。今は性犯罪のほうが濃厚。というのもインターネット様々なんですよ。』

「これまで簡単に入ってこなかったアングラ情報が、いつでもどこでも誰でも手に入る。望まない人にまで送りつけていく。行きつくところは、仮想現実を実行してしまう人間が増えるんですね。」

『デジタル信号の大半が有益でない情報として行き来しているのが現状ですよ。コストが安いだけに野放し状態。これをダイレクトメールでやっちゃうと高くつき、匿名性もうまくいかない。』

「そういう背景があると分かっていても、現実には子どもの安全が脅かされるわけですよね。」

『そう、子どもの数が減った分、狙いやすくなった。道路が整備されて狙いやすくなった。地域住民の目がまばらになって狙いやすくなった。利便性と気楽さを求めた結果、安全性が低下しているムラがどんどん増えているんですよ。人がかたまってすんでいるところはどこもムラですよ。』

「新興住宅地なんかその典型でしょうね。田んぼや畑があれば、日中はそこに人が出入りし、人の目が抑止力になりますね。ところが家が建ち並ぶと、道路には移動する人の目しかないですね。」

『見られているという地域の安全性を評価して、薄いところほど対策が必要なんですよ。人気の少ないところに防犯灯を付けるという発想は、そうした考えから出てきたことなんです。』

「もう一つの考えは、自分の身を自分で守り、地域住民が共同体として人を見守るしかないと思いますね。月光仮面や保安官を配置できたとしても、死角をなくすのは至難の業でしょうから。」

『いざというときにどう動けるかは、老若男女問わず必要なこと。さしずめ、一昔前なら地震、雷、火事、おやじですんでいましたが、今は交通事故に不審者を付け足さなくちゃいけませんよ。』