管理社会

「悲惨な鉄道事故が起きてしまいましたね。」

『運転手自ら走ってしまったんですから、不慮の事故とは言い難いです。』

「航空機も管制指示に従わないとか、うっかりミスが続いていましたよね。」

『マスコミは、安全神話が崩れていくのではないかという不安を煽ることなく、立て直し策を提案して欲しいですよ。』

「高度に組織的に管理された社会は、情報伝達や判断が適切になされていれば、非常に安定に機能するはずですよね。」

『そうなんです。管理社会を誤解しないで欲しいです。管理社会は指示命令だけで動いている窮屈な状態を指していません。』

「だって、もともと管理という言葉はよくするという意味ですよね。それが1960年代以降の高度経済成長の中で目の敵にされてきたわけですね。」

『自由を押さえ込んで、締め付けるという意味あいはどこにもないです。』

「今回の事故だって、次第に情報が集まってくると明らかになりつつありますが、遅れを取り戻そうとしたのがきっかけでしょう?」

『単なる遅れじゃないから恐い。1本の列車だけでなく、別の路線の列車まで巻き込んで、いわゆるダイヤの乱れというのが起こるんです。』

「だから、遅れちゃいけないという状態に陥りやすいんですね。遅れても安全第一で処理するのか、遅れたことを理由に上司が叱責するのか。まさに会社組織が管理社会の理念を捨てることでゆがんでしまうんだ。」

『荷物の運送業だってよくありますよ。定時到着を保障し、安い価格で運ぶことを約束すると、速度超過も黙認されてしまいます。ちゃんと安全運転管理者や運行管理者がいても骨抜きになりかねない。』

「過積載だっていっしょですね。無理してたくさん積めば安上がりにはなりますが、危険と背中合わせみたいなもんです。」

『安全に、快適に、正確に、時間どおりにという契約は管理された中で運用しないと違法行為の温床になることはこれまで繰り返し言われてきたことですよ。』

「ことの重大さは、運転手一人にかぶせられなくなってきたわけだ。」

『だって、事故が起こっても運行不能区間を除いて、正常運転が維持できていることは管理社会として機能しているからいいことなんです。』

「でも、非常事態が会社内に起こっているのに平常時と同じ行動がとれるのは不思議ですね。」

『あそこまでマスコミがたたくのは、おおかたの世論が納得するでしょう。』

「会社にとって非常事態なのに遊ぶ時間があるなら、何で困っているところを応援しないのかと!」

『管理することをきちんと理解していないと、統制をとることはどこの職場でも難しいでしょう。』

「組織全体のことに思いが至らない管理職が増えたのでしょうか?」

『管理を履き違えているだけならいいのですが、さてどうでしょう?あなたの周りの管理職は・・・。』