世界の中の日本
「オリンピックでは、アメリカメディアの予測通りメダル獲得が続いていますね。」
『変でしょ、国内メディアの前評判と海外から見た日本の評判に落差があるんです。』
「スポーツの世界に限らないですが、自信と誇りを持って自慢すべきところを控えめにしてしまう。控えめを美徳とする国民性で片付けてはいけないですよね。」
『水泳にしたって、お家芸の柔道にしたって、体操、バレーボール・・・往年の華やかなりしころの復活で片付けているんですからお粗末でしょ。』
「そりゃそうです。スポーツ界で頂点に立ってそれを維持することは簡単なことじゃない。追いかける側の世界の競争相手は頂点に立つために徹底的に戦略を研究しますからね。商業主義のオリンピックに変貌したといっても、企業を含め、研究開発は市場を獲得する手段になってます。」
『選手だって、アメリカンドリームならぬジャパンドリームがぶら下がっているんですから、真剣ですよ。』
「ところが、夢を追いかける選手たちがアメリカやヨーロッパに出て行くのは、日本で叶えられないステータスとマネーが動くからなんですよね。」
『実力の評価が常に低く、曖昧な日本ではやってられない。でもね、きっちり評価される分野では海外からの流入もあるわけです。女子ソフトボールや相撲界は逆パターンがある。モンゴルにいるより、ジャパンドリームにのっかる方が断然夢が叶うんですよ。』
「要は正当に世界的に評価されることを世間一般に広めていくメディアの使命感が弱いわけだ。」
『特許報酬で提訴されると話題にし、かつての特許の成果はちっとも宣伝されない。一生懸命やってきた人はバカバカしくなっちゃうでしょ。企業も特許や発明を話題にしすぎると危ういと思ってか、世間一般には控えめにしてきた。我が社はこれで稼ぎましたと自慢しないんです。』
「身の回りに数々の日本の研究開発者の業績が目白押しなのに、存在感乏しいですものね。実力が評価され、成果が認められる日本を後押しできるのはメディアの実力ですからね。」
『自信と誇りを主張できるのは、スポーツ界や産業・技術界だけではありません。それを支えてきた教育界の成果だって大きいんですよ。』
「日本の教育システムは欧米で随分まねられてますよね。これだけ均等に高い教育力を発揮した国はありませんからね。それでも海外からつつかれると、自信のない反応で危機感を露わにしているんですから情けないですよね。」
『一つだけが自慢の種になっちゃうといかんですよ。教育、産業、技術、スポーツ、芸術・・・あらゆる分野でジャパンドリームが国の内外を問われず実現できるのだという確信をもっともっとメディアが流さないと活気が出ませんよ。』
「手始めに、スポーツ界に限りませんが、その日の活躍だけでいちゃもんを付けるのは止めて、過去の実績データをしっかり蓄積し、活躍の経緯が紹介されてしかるべきなんです。ノーベル賞受賞にかかわった方の話を聞いてますと、なんでノーベル賞に至ったのかよく分かりましたからね。」
『同感です。今日の試合で32号ホームランを打ちましたという話で終わって欲しくないです。プロ入りしてからの毎年のホームラン数を知らせるぐらいのことはお手の物でしょうが。水泳だって、金メダルを取りました。記録は何秒何だけではつまらんです。公式の大会でこれまでどんな記録を収めてきたか知らせるのが礼儀ですよ。そのことが、ジャパンドリームをいい意味で煽っていくことになる。』
「世界中の一部分から日本はどう見られているか、アンテナを高くしておきたいところです。」
『頂点に立つと常に追いかけられるという当たり前のことを冷静に受け止めることのできる自信と誇りを持ちたいものです。ありとあらゆる分野でね。』
「身の程知らずの自慢話はいとも簡単につぶされますよ。でもね、独りよがりの主観的な評価に過ぎないと冷ややかに見られても、確信があれば客観的な評価に変わっていくこともあるわけです。」
『見向きもされなかった発明が、ある日突然偉業に変わることもありますから厄介でしょう。だから、自信と誇りが重要な条件になるんです。世界の中の日本というものの見方をベースにして・・・。』