発達障害と犯罪

「殺人事件と発達障害の一つ、アスペルガー症候群が関連づけられて報道されてしまいましたね。」

『世間一般が理解を示すのに手間取り、啓発が後手後手になって、偏見をばらまき、やがては差別を助長する構図になっています。』

「未だに、精神障害者も危険という先入観で、長らく隔離政策がつづきましたよね。」

『精神分裂病になった人は正常な判断ができないから、何をするか分からない。ましてや凶器を持たせたら、殺人もあり得る、なんていう怖さを強調したふれこみがありましたからねぇ。』

「だいたい人が人を殺す時って、だれでも平常心を失っていると思うんですがねぇ。」

『そんな偏見のおおもとには、人権意識の貧弱さ故「障害」という言葉を正しく伝えていない現実があるんですよよ。』

「確かに、昔から間違ったまま引き継がれています。差し障りがあるのは、正常と信じている人間が、自分を規準にして考えたときの思いなんですね。」

『そう。当の本人は、何も差し障りは感じない。逆に思い通りにいかないのは、おまえが悪いという周囲の目に辛い思いをさせられるます。』

「見て分かる体の違いは以前より市民権を得てきたと思いますが、精神面の違いはまだまだです。見た目で分からないから、違和感も強烈に持たれてしまうんですね。」

『はい。奇異な言動に面食らってとまどう人が多いです。それぐらいならまだしも、避ける、否定的な言葉をかける人さえいますからね。』

「発達障害になるともっと矛盾をはらんでいますよね。症状によっては、勉強もできるし、ちょっと無口なだけで、どんな症状が控えているか、分かりません。」

『ちょっとした行き違いや受容されないとき、パニック状態を生み出すこともあり、余計不可解で戸惑うことだってあります。』

「違いを認める柔軟な理解と対応の仕方が広く知られるとまた変わるでしょうが、当面は短絡的なステレオタイプの偏見を助長しない。マスメディアと教育関係者の責任は重いですよね。」

『殺人を犯した人がアスペルガー症候群だったという情報だけで、詳しい解説がないとアスペルガー症候群の人は殺人事件を起こすかもしれないという受け止め方に簡単に変わってしまいます。こういうときにこそ、症状を持つ相手の立場に立つことができないと興味本位になるんです。』

「精神的な病状があると話していることが意味不明と思う反面、どう話しかけるといいか、どう接するといいか、迷っている人は偏見がないですね。」

『どんな人であっても、どうしたら相手と意思の疎通ができるのかを一番に考えられるなら、偏見や差別とは縁がありません。』

「言葉の持つ先入観が大きいですね。あまりにも偏見を誘う命名ですよ。」

『痴呆だって、勝手な命名なんですよね。当事者に思いを寄せるより、傍観的に症状を言い表そうとしたから、おかしくなってます。』

「精神薄弱なぞ、最たるものです。」

『発達障害はようやく注目され始めた分野ですから、誤解のないように願いたいです。本人の問題ではない、親の育て方の問題でもない、責任を問うとすれば、症状に気づかず、早期に適切な教育がされなかったことと取り巻く人たちの無知だけです。』