自己中心

「自分勝手な人が増えてきたように思うのは気のせいでしょうか。」

『気のせいじゃないと思います。自分さえよければ、人のことはどうでもいい人が増えています。』

「自分さえよければというところは、確かじゃないよ。周囲は義理とか人情が薄くなったことをなげいて、当の本人は自分の考えをしっかり持っていると考えることもできるんだ。」

『個人主義の考え方はよく分かりませんが、どう見ても利己主義です。』

「なじみのない個人主義の考え方が入り込んで、義理に流されない考え方をするから自分勝手だと決めつけているところだってあるんじゃないの。したくないからしないというのは自分勝手だけど、生活共同体の中で当然しなければならんことができていたら問題ないはず。」

『みんなそうしてますよという義理をくすぐるところは確かにあります。』

「どうしてポイ捨てするの。みんなしてるよ。どうして制限速度を守らないの。みんな守ってないよ。所かまわずなんで携帯電話が使えるの。みんなしてるよ。こういうやつだよね。社会の一員としての判断、他人にいやなこを押しつけていないかの判断を個人が正当にすれば問題ない。」

『土地定着型の農耕民族の宿命みたいな気がします。都市型社会は未成熟のまま人口だけが肥大化しているような気がします。』

「義理でつきあうのと自分が必要なかかわりとしてつきあうのとは使い分けた方がいいだろうね。人間関係を気にしすぎてどうでもいいことに仕方なくはまっているのはおかしな話ですよ。」

『根拠のないことに振り回されていたら、先入観や固定観念がつくられやすいことにもなりそうです。』

「そうだと思うよ。一人だけ違った考えをしていると不安になっちゃったりして。偏見や差別を無意識のうちに作っていくには好都合の考え方が身近にいっぱいあるんだ。」

『ということは、自己中心的な考え方なのか、個人の自由な考え方なのかを見抜く力がいります。』