戦争

「ほとぼりさめたころに戦争、どうしてなくならないんでしょうね。」

『民主主義も正義も全面的に戦争を否定する考えではないと思いますが、いかがでしょう。』

「そりゃそうですね。大多数が必要悪だと賛成するなら、戦争は正当化できるわけだ。民主的でないと独裁者を悪にするなら、戦争することも正義になるわけだ。ましてや宗教のために聖戦といえば納得してしまうのですから、無惨この上ない。理由は何だっていいんですね。」

『戦争は必要悪だなんて言わせないのは、人権尊重の考えだけです。』

「自由と民主主義だろうが、社会主義だろうが、共産主義だろうが、政治の仕組みに人権を出発点とする考えは乏しいですね。すべての人々に人権を保障すると、今まで当たり前と思ってやっていたことができなくなるでしょうね。」

『そうなんです。命を犠牲にしてきたから、安定な政治が維持できるという考えは根強いでしょう。』

「民主主義はマイノリティーを尊重するような考えに近いのですが、現実は多数派の論理で抑圧されることが多いですよね。ほどよく我慢させていると争いは起こりにくいわけだ。」

『まだまだ人権が保障される世の中にはなっていないということです。民主主義は正義だと言いながら、おおもとに人権尊重の考えが根付いていなければ未成熟なのです。』

「一部の人々にとってよい戦争であっても、一部の人々にとってはよくない戦争になることは避けられませんよね。やっぱり権力者の考えを変えるのは力の論理でしかないと堂々巡りが行われてきた。」

『どうしたら戦争をしなくてもよくなるか?いかがです。』

「対等に話し合いで解決できればいいのですが、権力と利害が絡みますから、簡単にはいかないですね。」

『どうしたら対等に話し合いができますか?』

「人権尊重を基盤に共通認識を持ってないとできないことですよね。」

『それしかない。命の重みを前提に犠牲を許さない考えがないとあり得ないです。』

「子供同士のけんかと同じ理屈ですね。」

『日本国憲法が実効性のある成熟した状態になれば、戦争は必要なくなるでしょう。』

「人権尊重と戦争放棄を掲げているのですから、矛盾しない崇高で優れた憲法だと思いますよ。」

『同感です。集団的自衛権のみ掲げているのは、未成熟な民主国家、民主的でない国家から攻撃を受けたときだけ犠牲を払うわけです。自国が侵略、崩壊させられないために。』

「戦争を仕掛けるということは、自分の国の人々、相手の国の人々ともに正義という理由だけで人権を保障しないことになりますよね。」

『理屈が実効性のあるものになっていくためには、傍観者の意見表明は大きな鍵になります。当事者より取り巻きの方が多いのが常ですから。矛盾を覆い隠そうとする流れは見逃せないことです。優れた憲法を盾に誇りを持たなくては自立国家とは言えないです。』