気象蘊蓄

「大気の循環は平年にない動きで尋常とは言えませんね。」

『わずかな平均気温の上昇に危機感を感じないのは素人考えです。』

「海水温にも,大陸の永久凍土にも影響を与えていることはすでに分かっていることですよね。」

『結果として気候区分が微妙に高温のほうにずれています。そうなると低気圧の温帯,亜熱帯,熱帯の規模が常識に当てはまらないのです。』

「局地的な豪雨が多くなったのは熱帯に近い低気圧の規模ですよね。」

『雨が降るか降らないかという程度の話は気象学では入り口にも立っていない話題です。』

「でも,くらしの中ではそれが一番の関心事ですね。」

『程度の低いお天気キャスターの話を信用するようでは役に立ちません。』

「気象予報士という資格を疑いたくなるような発言がありますからね。」

『予想される状況を誇張するだけの予報士なら素人同然です。だから予告したでしょとという責任逃れにすぎません。』

「日本だけでなく,地球全体を相手にしているのが気象学ですよね。」

『当然です。局地予報でさえ広範囲の状況判断が求められます。常に微視的な分析と巨視的な分析が求められます。』

「ちょっと知識があれば,直近の雨雲レーダーの画像を見れば空模様は分かること。連続画像を見ればどれくらいで雨が降り出すか分かること。移動距離と経過時間から何分後という予測さえ可能ですからね。」

『判断する情報はあっても判断を下さないから帰宅困難者が出てしまう。必要な情報を組み立てる人が不在です。』

「台風が近づいて雨風が激しくなるでしょうと煽るだけで,それに伴う事態までは踏み込まないですね。」

『地震の予測も同じことなんですね。予想される事態をえがくことで混乱や災害を減らすことは可能なんです。』

「風速が○○m以上になりそうだと鉄道は止まるとか,時間雨量○○mm以上が予想されると地下鉄が閉鎖されるとか,飛行機はこれぐらいの天候で発着できなくなるとか,すでに対応基準が示されている事態を連携させて知らせることですね。」

『土砂災害や洪水については市町村がつかんでいる河川の水位と連携しないといけない。ばらばらでは意味ないんです。』

「ダムの放水で洪水というのはもはや人災。守備範囲が狭いから他人事になってしまうのでしょうね。気象現象の結果をダイナミックにとらえる力がないと場当たり的な対応しかできないと思います。」

『天気予報が営業成績に関わる分野では目的がはっきりしていますから商売として成り立っています。ところが防災の分野では情報集めだけにお金が使われ,集まった情報をどう判断するかはお粗末な状態です。』

「ならば,市町村の防災担当者はせめて気象予報士の資格を前提にしてもよさそうですね。」

『時間雨量や増水だけで避難をさせる判断は無理です。もう一つ要求されるのが地点ごとの地質です。長年かけて旧地質調査所がまとめた地質図は埋もれた情報です。』

「当時の現物は古書店でしか手に入らない図ですね。スキャンデータは有料で手に入りますが,関心のある人は少ないでしょう。」

『大量の気象データはスパコン頼み。それでも1時間後を予測するのがやっとこさの現実です。』

「こんな地面にこれだけの雨がといっても山の状態も問題ですね。」

『そうです。滑らないと判断している山でも造林したところや雑木が少ないところは保水力が弱くなります。自然災害に向き合うときは一筋縄ではいきませんよ。』

「山を切り開いたり盛り土をしたところは地下の水脈まで理解しないと足元をすくわれますね。」

『話が広がってしました。要するに気象は雨風や寒暖だけを話題にしないで垣根を越えた情報を連携させ、総合的な判断の情報が流布されるようになってほしいです。』