風評・噂

「いつの時代にも事実をねじ曲げた情報が話の種になって流布されますね。」

『煽れば煽るほど騒ぎは拡大し,それだけで喜ぶ輩もいるから情けない。』

「かつては子どもの間に噂が広まった口裂け女の話,あり得ないのに信じてしまうんですね。」

『イラストまで紹介されて,まことしやかに語り継がれ。』

「続いて記憶にあるのは,山口ナンバーの当たり屋というのがファクスで流れましたね。」

『これまたでっち上げ情報で,警察も問い合わせに振り回され,はたまた新聞にまで取り上げられ。』

「これらは架空の話でしたが,事実確認されないまま風評になったものもありますね。」

『O157集団食中毒ではカイワレダイコンが原因食材として浮上,根拠もないのにあちこちのカイワレダイコンを拒否。』

「O157は牛肉経由が一番疑わしいのに,カイワレが怪しいを信じましたね。食中毒はなぜ起こるかを知っていたら,こんなことにはならないですよ。」

『新型インフルエンザのときも過剰反応して,死者が出たと大騒ぎ。空港は水際作戦の最前線。ステレオタイプの偏見とともにマスクが大流行。何のためのマスクだったのかと未だに分からん。』

「病原菌は見えないから怖いんですね。感染したくないから避ける,感染させないように隔離する,方法としては間違っていませんよ。しかし,死者数だけで危険度を煽り,致死率危険度は後になってこそっと結論づけられましたね。」

『牛肉の大腸菌リスクは大きいことが分かっているのにユッケ事件が起きてしまった。』

「ふぐ調理の資格をもたない人がさばいたふぐであたるのと似ています。資格の問題ではなく,何が危険かを知っていないと噂に振り回されるだけですね。」

『大事な情報を整理して判断する力が弱い。マスコミにも個人にも行政にも会社にもということになるかな。』

「原発事故でも判断に必要な大事な情報が後から公開されてますよね。」

『福島の人はみんな放射性物質がついているという正しくない判断が噂としてまことしやかに伝えられる。』

「恐怖心に駆られてステレオタイプの偏見がいとも簡単にすり込まれる。関東大震災の教訓はいかされず,歴史は繰り返されていますね。」

『日々事件を追うマスコミは事実報道の責務を自覚しないと野次馬マスコミになる。』

「科学的な根拠をしっかりつかみ,知らせることが風評や噂を払拭する大きな力となる報道だと思うんですがね。」

『放射線量はピンポイントでデータが出てきますから,時系列に従って推移を整理しないと危険度は分からん。』

「病原菌の伝染経路とは異なる視点が必要ですね。」

『車が移動すれば拡散するし,空気中に浮遊すれば風で移動する。服に付着して運ばれないようにチェックするだけでは万全とは言えないな。』

「似たようなことは過去にありましたね。伝染病の恐怖に紛れ込んでハンセン病は科学者自らが正しくなかった根拠で隔離したわけですから人災。ぬかりない対応が要求されているわけで,判断をする責任者が人の命を預かる重さですね。」

『我が身に置き換える発想が責任者にないと取り返しのつかない不条理な対応になる。』

「病原菌や放射性物質は目に見えない怖さで不安になり,根も葉もない憶測を不用意にしゃべると瞬く間に情報が広がってしまうんですね。」

『最悪の場合は怖いことになるが,今のところ心配はいらないと言っても,次に伝わった時には前後が省略されて怖いことになるんだって,という話になる。』

「福島の原発は大変なことになって半径20km以内は近寄れないという事実が,外国の知日派でない人が聞くと日本の原発は大変なことになっているんだって,に変わってしまう。」

『日本について知らない人は福島と東京がどれくらい離れているかさえ理解してないですから,言葉だけでは正しく伝わりませんよ。』

「国内だって知らない人は無茶苦茶です。鳥取と島根の位置関係が定かでない日本人だっていますからね。」

『水素爆発で放射性物質が飛散したようです,なんて曖昧なことを報道したら,日本中に飛び散ったと誤解される恐れもある。』

「あそこには怖い幽霊が毎夜出るんだってと噂が流れれば,全員が信じることはないでしょう。」

『登場した幽霊の証拠写真もないのに人騒がせな噂に決まっている,と冷静に判断できる人もいるはずだ。』

「事実の伝聞なのか,憶測の伝聞なのか,かぎ分ける力がいりますね。」

『かぎ分けるには,豊富な知識にもとづいた判断力あるのみ。』

「専門家が必ずしも豊富な知識を持っているとは言い切れませんね。」

『博識のほうが判断力に優れているかも。』