放射線事故

「非日常的な事故だけに知識不足を思い知らされます。」

『高校物理で学習したぐらいの知識があれば理解可能だと思いますよ。』

「まず放射線の種類からして怪しい。」

『α線,β線,γ線,中性子線ぐらいはご存じでは。他にもまだまだありますけど。』

「X線はまた別物なのか怪しい。」

『γ線に近い別物ですね。』

「さらには数値単位がややこしい。」

『確かに。シーベルトとシーベルト毎時は意味が違う。シーベルト毎時は被爆の強さ。シーベルトは人体が吸収した放射線の影響度。』

「ベクレルはまた違う意味があると。」

『毎秒の放射能の量になる。』

「では,放射線と放射能は似たもの同士ではないと。」

『放射能は放射線を出す能力,放射線は高エネルギーの電磁波もしくは粒子線のこと。』

「ということは,放射能を有する物質は放射性物質ですか。放射線量は放射性物質の量や条件によって変わるわけだ。」

『見えないものを数値化するという点では電力と似ています。』

「なるほど。放射性物質に近づけば被曝量が増え,長時間さらされれば同様に増えると。」

『安全神話ができてしまったのは温度制御と放射線の遮蔽制御が可能だというだけのことです。』

「暴走することなく安全に制御できるから原発が動いているんですね。」

『γ線や中性子線は水素原子が遮蔽の役割を果たす故,コンクリートや水が使われます。二重三重の壁があるだけで,壊れないという保証はどこにもないです。』

「鉛が効率的というのは聞いたことがあるけど。」

『残念ながら常温での安定な状態ならいいでしょうが,300℃ぐらいで溶けてしまいますね。暴走したら役に立たない。』

「そうか。水が頼みの綱なんだ。正常なら汚染水となってもぐるぐる熱交換をして際限なく使えますけど,外から水をかけ続けたら垂れ流しでは。」

『予想通りです。循環経路を確保するのが一番です。』

「穴があいて漏水していたら無理では。」

『汚染水にまみれた中で漏水を止めることは自殺行為です。もはや別の手段しかありません。』

「巨大な桶を作るしかないのでは。」

『それ以外では、水中でも固まるモルタル注入しかないです。』

「いうほどに簡単な作業ではないのでは。」

『作業する人の被爆管理が大変厳しいでしょう。規制されている被爆量を超えた人は連続作業をしてはいけないですから、無人で動かせる作業機械が是非ともほしいでしょうね。』

「とにかく封じ込めるのが基本かな。」

『そうです。拡散は事故の拡大にしかならない。』

「汚染水は大量の海水で薄まるという不届き者がいるが。」

『屎尿と同列には扱えないことを理解していないのです。』

「周辺に飛散した放射性物質でも同じですね。」

『表土を一か所に集めるのが基本です。』

「放射線を出さなくなるまでに長年を要すると」

『だから、放射性物質に汚染された廃棄物同様、最前の管理が求められます。』

「放射性事故はその場しのぎの処理ではいけないと。」

『廃墟をどこにするかという現実問題さえ話題に上らない人知の危険性が続いています。』