秘密

「知られたくないことを知りたいという人は多いでしょうね。」

『秘密は好奇心をくすぐるんですよ。』

「信用できるあなたに私の秘密を教えますといわれれば胸騒ぎが始まりますからね。」

『これを第3者が暴露すると世間が騒ぎ始めますよ。』

「たいていは不利益になるか,交換条件になるかでしょう。悪意があれば脅迫にも使えますね。」

『秘密や嘘は善悪で判断できないと言いたいところ,現実はそうなっていませんな。他人事で判断するから善悪でごまかしているんですよ。』

「秘密にすることで利益になることもあれば,不利益にもなる。情報の付加価値みたいなものですね。」

『どこの誰かは知られない,正体秘密の人間がなりふり構わずできるのとは違いますな。』

「ですね。それは透明人間願望と同じようなことでしょうね。」

『秘密や嘘は策略として必要なことといえども,必要としない人が使うと面白半分になってしまいますよ。』

「素人が使うから善悪でごまかされると言ってもいいですね。」

『似たようなことで,知りたいことを知らせない弊害も出てきていますよ。』

「当事者が知らせてはいけないと確認したうえでやっているならいいんですけどね。」

『普通に考えて,本人が知らせた個人情報は相手に必要だから提供している。その代わり別の人に教えたりしませんと約束している。』

「そもそも金融,電話,通信販売,電力などの会社は個人情報の宝庫を持っているんですからね。」

『勝手に他の営業に使いませんと宣言しているだけにとんちんかんも起きますよ。』

「奇怪な電話勧誘ですね。」

『その通り。市場調査をすれば分かるはずなのに電化住宅の家に電化住宅にしませんかと電話してくる。最初は笑い話で済むけど,度重なると腹が立ってきますよ。』

「関連会社には教えないよというやつですね。」

『ちゃっかり内部で使っているのもしつこい。あなたの機種はこの日までしか使えませんとこちらの都合なんてお構いなしに買い換えを要求する広告を送りつけてくるんですよ。』

「会社の都合を押しつける類ですね。」

『教えることで不利益にならないと分かっているのに教えないという話題もありますよ。』

「民生児童委員や救急司令センターの話ですね。」

『教えないことで当事者の不利益が増えても法律に縛られてしまう。何のための法律だったのかということになりそうですよ。』

「悪意のある人に使われないようにする趣旨はありがたみがあるのですが,善意の人も排除するのは法の不備としか言いようがないですね。」

『善意か悪意かを判断するのは,情報を持つ人が責任を持つことになりますよ。判断できないから教えないというのはごもっともなようで,情報の当事者の意思を代弁したことにはならないな。』

「ダイレクトメール,スパムメール,電話勧誘は相変わらず賑やか。代行させているとは言え,かけた費用に見合うだけの効果は期待できないような気がしますね。」

『裏を返してみれば,個人情報が商いとして成立する以上,儲かっているんでしょうな。』

「誠実な商売とは思えないですけどね。」

『個人情報は秘密にする情報ではない。しかし,居住地,年収1千万以上,50才代,職業,負債の有無などの粒よりの情報がセットになると秘密の度合いは上がってきますよ。』

「垂れ流しの広告は知名度を上げるのに貢献するでしょうけど,こういった情報は確率の高い売り込み先として欲しがるでしょうね。」

『実際にあった話。成人式を迎えることになった息子のところに晴れ着のダイレクトメールが数通届くんですな。どうも呉服屋さんが手に入れた名簿には性別がなかったと推測される。』

「男女混合の名簿を手に入れるとあり得る話ですね。名前から予想するしかない。みごとに予想が外れたんですね。」

『多くの場合個人の秘密はよからぬことが多いでしょうな。外交上の秘密は駆け引きですから,もはや機密ですわ。組織的な隠蔽工作は機密ではなくまずいことを隠すだけ。』

「事件が起きた時点で機密情報にするという組織的な対応が即座にできなければ危機管理は無理でしょうね。」

『同盟国の一報で隣はミサイルを発射したらしいというような報道発表があけすけに行われるようではバレバレですよ。』

「戦国の世の中じゃないですけど,不意打ちは常套手段ですからね。」

『詐欺だって不意打ちみたいなもんですわ。』