自立のススメ

「今時のご時世,自立を阻むことが多すぎやしませんか?」

『100年前の世の中と比べれば後退していますよ。』

「でしょっ。100年前の一人前といえば何歳でしたか?」

『15歳前後です。』

「10年以上のずれじゃないですか。」

『そうですよ。就職,結婚,子育て,いずれも高齢化しています。』

「一番活気があるとき,親に養われているんですね。」

『12年から20年も学校に行っていると時間が間延びしていると思いますよ。』

「制度が足を引っぱって,自立を阻んでいることになりますね。」

『年齢に関係なく,学問を深める人もいれば,実社会で経験を深める人もいるのが現実ですよ。』

「高学歴の神話を引きずると働き盛りを逃がしてしまうと。」

『学士,学位,免許は単なる紙切れ。一人前に自立すれば世の中で生き抜く試練ができますよ。』

「半数以上が学士を持っていたら学士の値打ちは乏しいと。」

『一昔前の学士と今の修士が同等になるような制度にしてしまったんですよ。』

「学んだことの評価ではなく,属していた評価じゃないですか。」

『だから自立が遅れてしまうという悪循環に陥っているんですよ。』

「その点,一番自立を促されるのはスポーツの世界でしょうか?」

『学歴や年齢制限はゆるいほうでしょうな。15歳から18歳が境目。』

「反対に自立しにくい世界もありそうですが。」

『芸術家は幅が広がるでしょうな。』

「親の収入に依存せざるを得ない場合が多くなるかもというぐらいですね。」

『全体を見渡してみると,問題解決につながるのは早い自立が効果あり。無駄な時間を過ごしている人がけっこういるのではという心配だな。』

「自立を一番に考えないといけない問題がずれたところで取りざたされていますからね。」

『学校に行かない,仕事もしないで引きこもる,発達障害で集団になじまない,いずれも自立が価値あることだという大前提が崩れていますよ。』

「一人前にならないでいるのは,ある意味楽ができますね。」

『宿り木の世界ですな。』

「背景を抜きにして自立支援法を出すずれは大きすぎますね。」

『自分で稼いで生活していくためにはどんな条件整備が必要で,自らの責任はどこまであるか,当の本人が分かっていないと話にならないですよ。』

「仕事がないという理由と仕事を身につけようとする気がないという理由のちがいが理解できるかですね。」

『自分の力でどうすることもできないという理由で排除されているかどうかだけですよ。』

「ですね。自立していないとわがままも理由の一つになりますからね。」

『だから,近世の未熟な社会のほうが制度的には厳しい自己評価とともに柔軟な進路選択があったといえますよ。』

「生活が厳しいからこそ,自立をせかされる世界ですね。」

『今の世の中では,自立し損なうと笑えない出来事がたくさんありますよ。奇妙なくらしが成り立っているんですな。』

「都会で就職したわが子に仕送りをしている親がいますね。」

『独り暮らしをしても食事が作れない人がいますよ。』

「冷蔵庫,包丁,まな板不要の生活ですね。」

『大学受験に付き添ったり大学の卒業式に親が出席したりするんですよ。』

「小学生じゃあるまいしね。」

『自分のことは自分でしなさいが成人になってもできない。依存していますよ。』

「3歳から始まる自立の道を崩しちゃいけませんね。」

『そうなっていない一番の象徴的なことは,指示命令の言葉が廃れていることですな。』

「同感です。自立を促す言葉ですね。」

『そもそも子育ての目的がおかしくなっていますよ。』

「我が子を大学に送り込むことが親の役目ではありませんからね。大学を優良大企業に置き換えても同じこと。」

『一人前にするだけですよ。』

「それこそ食事の量が一人前という程度の情けなさでは?」

『着せる服も。』

「衣食足りて自立を忘れる。」

『仕事と家庭の独立は孔子の教えに敬服だな。』

「社会問題に対して様々な見解が飛び交う中,自立が解決の切り口としてまとめられると思うんですが。」

『さて,何人気付くかな?』