家族

「住民票が存在を証明できなくなっていますね。」

『年金も税金もざる。住民票までざるだ。』

「挙げ句の果ては統計データが嘘っぽくなりますね。」

『行政の怠慢だけではすまなくなって,詐欺事件あり,行方不明者あり,家族の崩壊あり。』

「高齢者だけの問題ではないです。ある日突然いなくなって見つからない人も10万単位でいますからね。」

『意図的な失踪なら,公にはできないが家族は知っていることもある。』

「そもそも統計庁が行っている人口推計が実数ではない。国勢調査を基準に誕生,死亡,出入国異動だけですからね。」

『だから,調査に引っかからなかった人,住民票のない住民はよく分からない存在だ。数えられていない。』

「現住所を失った住民票がない人は数のうちに入っていないんですね。」

『戸籍があり,住民登録もありながら,住所地に属して存在を確認できない人。ホームレスだけに限らない。』

「国が個人を特定できていない例があるということは,その人の生死にかかわっていないですね。」

『国が存在する前提に,国を構成する民の生命と安全を保証するという大義名分が怪しくなってくる。』

「すべて国民は…にまたまた例外が加わっているのが現実ですね。」

『だから家族の定義もおかしくなっている。』

「家族って何ですか?」

『親族,身内,同居人…きまりはない。戸主はなくなり,家父長制の考え方は否定され,世帯主のみが手がかり。』

「家族を大切にと言葉を発しておきながら,家族とは何かに言及しない曖昧さで乗り切ってきたんですね。」

『3世代同居の形態ならば,分離するまでひとまとまりの家族。親子だけでも家族。』

「一時的な独り身は別として一人ぐらしにとって家族という言葉には縁がなくなりますね。」

『配偶者でなくとも仲良しが二人で一つ屋根の下に住んでいたら家族でとおる。』

「どこのだれという存在証明ができれば家族は成立しますね。」

『私が存在しなくなったとき,私自身が登録を抹消することは不可能になる。同居の制限がなくても家族が家族として枝分かれしていくならば何とかなる。しかし,家族が崩壊したら宙に浮いてしまう。国は国としての機能を失わない仕組みをもっていないと存在証明も不存在証明もできなくなってしまう。』

「単純に考えれば支配していないことになりますね。架空名義,住民票なし,住所不定は国の支配下にないことになりますよ。」

『外国人は登録証があり,納税もしている。国民としての権利はすべて保証されていないが,支配下に置かれて私の存在が証明できる。』

「最小単位である個人とつながりを示す家族の役割を本気で考えないといけませんね。」

『一国の首相が間違った発言をしたことがある。危険地帯に渡航した青年に対し自己責任をかぶせることは,国の支配下に青年がいることを否定している。国として国民の生命と安全を守るという大前提が崩れている。』

「同じことで,家族の絆が希薄になったと家族を構成する個人を非難しても,家族の義理や義務を曖昧にし,支配下にある保証を明確にしないのでは変わりようがないですね。」

『めいめい勝手な人は好きなようにやってよろしいと宣言している。』

「よくない方向の始まりは個人情報保護法ができたころからでしょうね。」

『国の支配権力が低下して,プライバシー権が手厚くなりすぎた。』

「結局,支配下におけない少数者を規制するために支配下にある多数者に不信感を与えてしまいましたね。」

『本来取り締まるべきは架空名義,名義譲渡。これがなくなれば不正取引はできなくなる。』

「住民登録番号,年金基礎番号,納税者番号,口座番号が同一人物で一致する人は大多数になるはずですよね。」

『名寄せをされて困る人は,多くの場合反社会的な存在。』

「詐欺,脱税のたぐいですね。」

『身近なところでは,金融機関に行けば私という存在がいかに信頼されていないか分かる。』

「家族という代理人であっても,当事者の意思表示を代行することを渋る金融機関もあるんですね。」

『私が私であるという第3者証明書は今のところ確立されていない。行き着くところはDNA情報の精度が今のところ高い。これでさえ100%ではない。』