教育再生の勘違い

「やっぱりゆとり教育がいけなかったのかと思わせるような来年度用の教科書報道ですね。」

『とんでもない濡れ衣ですよ。』

「教科書も手引きもない家庭教育こそ機能しない家庭が増え,学校教育に大きな影響を与えています。再生すべき教育は学校教育より家庭教育だと思いますね。」

『機能している家庭が多数派であっても,機能していない家庭の割合は増えているはずですよ。そもそもそんな統計情報はないですから,のんきなもんですよ。』

「早寝,早起き,朝ご飯を言い出したのは学校の先生です。でもね,確実に家庭の問題です。」

『あいさつや返事を躾けるのだって家庭の問題ですよ。』

「鉛筆の持ち方も箸の持ち方も同じですが,身につけるのはやはり家庭ですね。」

『学校生活の大部分は授業ですから,それに付随して諸々のことは,できて当たり前でないと大変なことになります。学級の中に5人も10人もいたら,先生は両親の代わりとなり振り回されますよ。…すでに振り回されているのが現実でしょう。』

「親業の仕方を伝授されていない家庭に育った子どもは,伝授する基盤がないまま,次の世代に渡すものが減るわけです。そこの対策は何も行われていませんね。」

『親が子どもを連れ歩くだけでは対策にならないんですよ。』

「子育ての中で家族が子どもに教育しなければならないことは生活に密着していますね。」

『そうなんです。手抜きしたり,自動化された生活スタイルに慣れてしまうと応用が利かない。道具の原理とか仕組みを知らなくても使えるから,学ぶ必要感も薄れるんですよ。』

「マナーやルールだって教える親がきちんとわきまえていないと世間で通用するとは限りません。教科の学習ができるかどうかの前提に,人の話を聞く,最後まで聞く,聞き逃したことは質問する,といった常識が身についていないと学習にはならないでしょうね。」

『世間では生活のリズムが崩れている子どもがいると話題になりますが,同時に親の生活スタイルが崩れていますよ。』

「手本を示せない親が確実に増えているとも言えますね。全員ではなく一部の親です。」

『非常識が少数派であれば,淘汰される可能性もあるでしょうが,非常識の仲間が増えると連れがいるからと安心してしまう。日本を特徴づける考え方は根強く浸透していますよ。』

「躾けはこうするのがいい。生活スタイルはこれが自分に合っている。生きていく上で箸は自在に使いこなせないといけない。…価値観を見極めて確固たる信念をみなさんが持っていれば,だらしない話は減るでしょうね。」

『人がなんと言おうと必要感のない携帯端末は持たない。勉強しなさいと言う前に脱いだ履き物はそろえなさいと言うほうが子育てでは重要だ。朝ご飯を食べないと仕事にならないのは常識,勉強する子どもも一緒だ。給食を食べるのならお金を払うのが当たり前だ。食い逃げを堂々と子どもに押しつけることはしてはいけない。…かくあるべき価値観を身につけていれば,学校では授業に専念できるんですよ。』

「うまくいかない原因をなすりつけることで解決を遅らせていますね。」

『子育てに入る親には家庭教育の受講を義務づけるのが一番ですよ。常識がある人は早く修了し,身についていない人には追加講習をしていくぐらいの制度があってもいいですよ。』

「お金で後始末するよりずっと効果があります。拒否できないように罰則規定があってもいい。先生の免許更新に使う金をこちらに回す方が費用対効果は大きいですね。」

『保育に下駄をあずけられても今の基準では機能しないです。家庭で保育すれば1対1,保育園なら3歳児で最大20人。安上がりの結果はすでに出ていますよ。』

「どこにお金をつぎ込めばうまくいくか,小手先の改善では話になりません。」

『とばっちりを叫んでも聞く耳持たぬ今は,出口のないトンネルにいるのと同じですよ。』

「ゆとり教育に使っていた教育のスタート地点を見ないと弊害は変わらないと思いますね。」

『学校や保育園がなかった時代は,家庭教育が唯一の教育でしたから,原点に返って見直せということですよ。』