外部からの提案の検討「消費税」
岡山県租税教育推進協議会 発行  <税ってなんだ>総合的学習
4地域・税金テーマ「わたしたちも「税金」を納めているの?」

 導入は「お小遣い帳をつけてみよう」というなげかけになっており、家庭科で使われてきた教材です。15年前ぐらいだったでしょうか、小遣い帳については、金銭教育というマイナーな領域で取り上げられたこともあり、貯蓄奨励の後押しをしていました。最近は、小遣いの意義が薄くなり、店舗も様変わりしたことから、一斉に取り組めない実態があるのではないかと心配します。
 指導要領の枠組みでは、税そのものの意義や仕組みを6年社会科で扱い、身近な問題として考えさせる素材というよりも、政治の仕組みとして学習することが中心となっています。ですから、教科の発展学習になるか、興味関心のきっかけをなげかけるかのどちらかになります。私の勝手な思いこみかもしれませんが、問題を掘り起こしにくいテーマです。
 ステップ1「どれだけ「消費税」を納めたかな?」で登場してくる消費税についても身近な存在でありながら、税を納めているという意識は薄いと考えられます。代金の中に税が入っていたり、金融機関で引き落とされたり、天引きされていたりすると、大人でも税を納めたという感覚が薄れているのは私だけでしょうか。納付書を持って、窓口で納めると納めたという感じがしてきます。
 一方、子どもたちにとって消費者という意識が明確にあるとは思われませんから、「小・中・高校生のお小遣いの平均は?」とたずねられても、多くの子どもたちが関心を示すとは限りません。ここで示されたような税を納めているかという導入と、身近な事象から税が使われた結果に出会っているかという導入と意見が分かれるところです。
 ステップ2では、家庭取材「家族の人に聞いてみよう」という聞き取りの学習から、「税の種類はどのくらいあるの?」という問題が提示されています。これは知的側面ですから難なくできるでしょうが、家庭の事情によっては税金を原資にした給付金を受けている場合もありますから、配慮を要すると思います。公平性を維持するために一律の課税にはなっていません。それゆえにプライバシーの問題が絡んできます。
 ここまでくると、小遣い、消費税、税の種類をそれぞれつなげていく思考の流れは1本のレールのようで、選択の余地がなくなってしまいます。税の種類にいくより、ステップ3「消費税について調べてみよう」を先にして、消費税のあれこれを調べる方が広がりが出るのではないかと思います。そうなると、調べる方法を綿密に用意しなければなりません。
 ステップ3の設問例は「消費税って何?」「消費税はなぜ必要なの?」「外国ではどのくらい消費税を納めているの?」となっていますが、高学年ならば新聞社のデータベースから話題を拾ってくることも考えられます。消費税分を払っているのに納められていない問題や、税にまで消費税がかけられている問題などが思い浮かんできます。また、外国の消費税率を調べることはおもしろそうなのですが、額や率はトータルな比較をしないと意味がありません。単純に日本の消費税率は低く、重い負担とはいえないと結論づけるわけにはいきません。
 ステップ4では、税務署訪問「税の話を聞いてみよう」という設定で、これまで学習した税の種類や消費税をもとに、「税金の納め方や働きについての話」「岡山県の歳入と歳出は?」などにつなげようというものです。目に見えないお金の流れについて、子どもたちがどれだけ関心を持つかにかかっています。税に対する理解だけを学習内容になっていますから、総合的な学習の時間で扱ってもかなり強引な展開だと私は思います。最後に話し合うとしても話題が乏しいかなとも思うのです。
 租税教育推進協議会としては最短コースで所期の目的を達成することができるプランですが、税について学びたいという動機の設定は難しいものがあります。遠回りでも身近なかつ具体的な素材から入る方が総合的な学習になるでしょう。税金でまかなわれている部分と善意のお金でまかなわれている部分が見えてきたとき、世の中の矛盾も見えてくるのではないかと想像します。