外部からの提案の検討「税と共同溝」
岡山県租税教育推進協議会 発行  <税ってなんだ>総合的学習
3地域・情報テーマ「電柱が消えた。電線はどこへ?」

 テーマと導入「街へ出て調べよう」はあまりにもかけはなれていると思うのですが、いかがでしょうか?「電柱・電線のある街の景観と電柱・電線のない街の景観を観察する」と持ちかけても、電線が地中埋設されているところは都市部の限られた場所になります。郡部では地形の都合で電話線だけが部分的に埋設されていたり、大きな建物で電気の引き込み線が埋設されたりしているぐらいです。
 また、この導入には「何を」という部分が入っていませんから、広範な問題点が見つかるかもしれない反面、何を調べたらよいか分からないといういきづまりのおそれもあります。あえて、「電線はどこへいったのか?」という具体的な投げかけは、地域が限定された素材ですから、身近にないところでは視聴覚資料に頼って提示するしか方法がありません。それにしてもなぜ景観の違いを観察するのかという動機付けは謎のままです。出かけて調べるときには、目的が伝わっていないと大変難しい誘いかけになります。提案者サイドでは、地中埋設の電線は美観を保ち、安全であるという価値観が先行していますが、災害、特に水害の時はどちらがリスクが大きいのだろうかとふと思ってしまいます。
 次のステップからは、共同溝に関する一連の知的理解を進める段階になります。ステップ1国土交通省中国地方整備局訪問「共同溝ってなんだろう?」では、「何が入っているの?」「共同溝の費用はどこが負担しているの?」「共同溝はなぜ必要なの?」「光ファイバーってなんだろう?」「ITSってなんだろう?」などの問題を解決し、ステップ2共同溝見学「共同溝を見学しよう」で実地に知識を裏付けるものです。
 両極端の話になりますが、人の集中しているごく一部で実施されてきた事業が過疎地域の街づくりにどうつながるのかという見通しは大変厳しいものがあると思います。整備された道路網は過疎地域にまで浸透しましたが、人の流れを変えたり、過疎に歯止めをかけたりするものにはなりませんでした。また、下水道も整備がすすみ、河川環境と住環境を大きく改善したようにいわれていますが、水の流れが変わることによる環境変化までは論議されていません。公共下水道はいいことずくめではないという問題もはらんでいます。
 共同溝が過疎地域までやってくる可能性とか、メリットとかは謎のままではないでしょうか。つまり子どもたちが学んでいく問題としてはかなり高度ではないかと危惧します。
 同じようなことが、ステップ3県庁訪問「光ファイバーはなんのためにあるの?」でも生じると思うのです。恩恵を受けるためには、情報端末の問題が大きく影響しますし、メガビットの情報転送量はメタル線のADSLなみですから、幹線から情報端末まで情報転送量を同質にしないと光ファイバー網のよさは生かされません。
 ということで、子どもたちが自分の課題をさぐり、夢を描けるのは、ステップ4「街づくりについて考えよう」になるでしょう。公共投資、税の恩恵より、自分の住む街がどのように変わったら住みやすいかを柱として考えていく方が自然の流れのようです。電柱や電線は、日本中、人が住むところならほとんどのところにあります。目の前の電柱や電線が地中に移ったら本当に夢が描けるのだろうかと心配します。