外部からの提案の検討「税とゴミ」
 学校に提供されている総合的な学習で取り上げてほしい提案が届きだしましたので、手元にある資料に対して個人的な検討を加えていきます。学校外の団体が総合的な学習に注目しているわりには、学校の事情が伝わっていませんから、そのあたりの摺り合わせになればと思います。

岡山県租税教育推進協議会 発行  <税ってなんだ>総合的学習
1地域・環境・税金テーマ「わたしたちのゴミはどこへ?」

 このリーフレットでは4本の提案がされています。
 導入では、ポスター表現「もしゴミ収集車が1年間来なかったら?」という唐突な投げかけが示されています。なぜ唐突なのでしょう。身近な現実からはいるのではなく、架空の連想ゲームをする方が子どもにとっては難しくなります。ゴミは身近な対象ですから、わざわざ遠回りすることはないと思うのです。「困る」「どうして来ないのか?」という以上の反応を期待できる子どもたちは限られるのではないかと心配します。
 次のステップ1が、「ゴミステーションへ行ってみよう。」ステップ2が、焼却場訪問見学「ゴミの行き先はどこだろう?」ステップ3で、市役所訪問「ゴミについて調べよう。」と続きます。そして、ステップ4で「ゴミ処理にかかるお金について調べよう。」から税の使われ方に目を向けようとする流れが概略です。
 指導要領の中身をご存じの先生方なら、不自然な流れに気づかれると思うのですが、いかがでしょう。ゴミ処理に税金が投入されていることを学ばせて、啓発の所期の目的を達したとするには都合のよい流れかもしれません。しかし、現実の学校現場はそのようになっていません。
 ゴミについての問題は3、4年の社会科で地域学習として仕組まれています。市町村の実態にあわせて、収集の仕組みや焼却場のシステムの資料は中学年の副読本に盛り込まれている場合がほとんどでしょう。そうなると、導入の投げかけは「自分たちの出したゴミはどんな旅をするのか?」あるいは、「1日分のゴミを仕分けしてゆくえをさぐろう。」などになるのではないでしょうか?
 ゴミステーションや焼却場、市役所になぜ行くのかということを子どもたちに伝えるとき、単なる誘いかけでは目的が明確に意識づけられないでしょう。なんのために行くのかが伝わることで学び取る目的もあわせて伝えることになります。活動や体験だけでは学びにつながらないといわれる理由は、学習の動機付けや必然性が用意されているかどうかを問題にしているからです。
 次に、ステップ4で示される税金の行方につなげる場合、身近な実態に目を向けておく必要があります。市町村によって有料の指定袋または札を付けるようになっているところもあれば、市販の袋でかまわないところもあります。なぜ処理料を負担するようにしたのか、なぜ税金だけで処理するようにしたのか、地域差に応じた問いかけが必要になります。また、分別の方法は処理場ごとに異なり、全国一律に行われているのではないことも問題点の一つになります。
 しかし、税金によって世の中の仕組みが成り立っていることは、あまりにも広範多岐にわたる問題で、中学年から高学年の社会科学習だけで全貌を理解することは困難でしょう。揮発油税のように目的がはっきりした租税はわかりやすいですが、ほとんどの子どもたちに関係する消費税などは抽象化された理解を求めることになります。
 そこで、子どもたちにとって租税が使われた結果を実感できるものはなんでしょうか。学校の建物、教科書、給食などにつながるような展開の方が、身近に感じられるのではないかと思います。社会科や理科の発展学習としてゴミを取り上げた場合、租税の意義に向かうより、環境問題へ向かうことの方がたやすいでしょう。強引に押し切ってゴミ処理を追求していく中で、「ゴミ処理はただではない。」「ゴミはどうしたら減らせる。」「ゴミは分けると資源になる。」というような追求したい問題が出てくれば、選択肢の一つになるぐらいの感触だと考えます。