発表の方法論
 発表は従来のショーに見立ててしまうと打ち上げ花火的なものになりますから、だれに対して何を伝えるのかをはっきりさせなければなりません。つまり、発表することが目的にはならないということです。発表は伝達の手段ですから、発表することをとおして自らの学びを深めたり、新たな課題を見つけたりすることに意味があると考えられます。したがって、必ずしも問題解決が完了していなくても、ましてや未熟な内容の発表であっても、発表したいことのプロセスが理路整然としていればよいはずです。いいかえると、発表することのよさはコミュニケーション能力を高められることにあります。
 一方通行の発表では得ることが難しくなるかもしれませんが、静的な方法としては、掲示パネル、壁新聞、本、リーフレット、実物展示などがあります。持ち運べるものは、特定の相手に見せることで、能動的な反応をつかむことも可能でしょう。本やリーフレットは見せたい相手に届けやすい方法です。ところが、パネルや壁新聞、実物などは受動的に待つしかありません。反応を手に入れるには積極的な働きかけが必要でしょう。より多くの人が集まる場が設定できるならばやってみる価値はあります。教科の学習では広く使われてきた手法がより多くの人に積極的に伝えたいときには、効果的でないと考えられます。
 準備は大変ですが、より多くの対象人数に耐えられる方法が動的な方法です。発表したいものを動かすことができるため、発表相手の目線を集中させることができるわけです。発表する相手を見定めやすいといえます。考えられる動的な方法としては、劇、プレゼンテーション、ポスターセッション、ビデオ、スライドショーなどパソコンを使った提示装置が効果的に手軽に使えるようになったと思います。オーバーヘッド、フィルムスライドなどは使うまでの準備や編集作業が高度になって煩わしさが多く、使いにくかったと思います。それがパソコンのおかげでデジタル処理が簡単に行えるようになり、飛躍的に情報伝達量も増えたと言えます。
 だれにどんな方法で伝えるかという流れは、子どもたちに選択肢として教えていかなければなりません。そのためには、先生が使いこなせていないと制約を受けるでしょう。パソコンが苦手だから、昔ながらの方法を使えばいいということにはなりません。もちろん使える機械がないということにならないように条件整備も同時に進められないといけません。写真や動画が瞬時に大画面に変換できる便利さは、発表に不可欠の条件にさえなります。
 発表して伝えることで、相手の反応が得られるならば、発表者は自分の取り組んだことや考えたことが自分以外の人にどのように伝わったかを知ることができます。そこから、よりよい伝達方法や追求の視点が見いだされていくと考えられます。