総合的な学習の地域素材
 総合的な学習で地域素材を発掘していく手法を考え直してみました。学区の中にある、先生の目にとまるものだけが地域素材になるとは限りません。はたまた、地域に足を運んで探検していくだけで地域素材が見つかるとは限りません。生活科、理科、社会、クラブ活動などで地域の特性にかかわる素材が取り込まれていくことはこれまでにも多くあったと思います。しかし、たいしたものはないからという判断の元で、教科書や市販教材に頼ることですましていたら、見直しは必要になると思います。
 学区の中の何が地域素材になるかは、その地域に住んでいる人や地域と深くかかわってきた人の力を借りなければ発掘できないのです。つまり、地域の人材を活用するプロセスの中に発掘の手がかりがあるということです。以前にも書きましたが、学校の中から学校を取り巻く地域を見ていると、学校という社会基盤は地域の中での生活基盤とはなっていないことが分かるはずです。学校は地域の中で特別な存在を担ってきたわけです。
 こうして考えをたどっていくと人のつながりを抜きにしては、前に進みません。学校教育を一手に引き受ける先生がさめた受け止め方をしやすい社会教育の分野に先生の余力が向くと、発掘の手がかりが出てきそうです。PTA活動も社会教育の一つですが、それ以上に多様な同好の集まりの活動や組織的な活動が行われています。学校とはあまり縁がないようでいて、様々な階層や年齢層の方々が集まるところは人材と地域情報のかなめとなります。
 勤務か勤務でないかを論議するのは、社会教育活動を自分のこととして認識していないことに原因があります。学校教育と連携することがあっても、余分の仕事ではない性格と目的を持っているのです。自主的、奉仕的な活動として先生自身の生涯学習が当然あってしかるべきだという認識を持たなければできないことです。義理で参加したり、世話をしたりするのではなく、自分が楽しみ、自分のためにやってみようという姿勢が大切なのです。
 社会教育活動の場で出会っていく人材は、多様であるがゆえに思いも寄らぬ地域素材の発掘につながるということがあります。老人クラブなどはお決まりの伝統わざとともに、地域に伝承される出来事も数多く持っておられます。
 もう一つの地域素材につながる人材は、市町村の歴史を編纂している方々です。市町村史が作られていないところでは手がかりが少なくなりますが、自分の勤務している市町村がどうなっているかは、役所なり、役場に問い合わせてみるしかありませんが、それだけの価値はあります。文化財保護委員という形で、埋蔵文化財や無形、有形の文化財を研究している方もおられます。地域の遺跡、遺物、古文書などを掘り起こしながら、その地域の歴史、風土、文化を描いていますから、地域素材の種はいっぱいつまっています。私もおりを見て編纂途中の町史をひもとく機会があります。地元の住人ではない先生が学区の中のことを十分知らないのは当たり前のことです。地元のことを知らなくてもいいと思っているか、だれに教えを請えばいいのだろうと思っているか、が地域素材発掘の分かれ道になります。教えるための知識は豊富にあると自負していても、地域の中の情報は地元の人に頼るのが一番です。