複数学年で扱う
 各学校の創意工夫が現実に動き出すまで残りわずかになってきました。総合的な学習の時間を複数学年で扱っていこうとする場合、これは何年生のやることとか、この内容は○学年には難しいとか、先に内容枠を先生が査定してしまったら、実現は難しいかもしれません。テーマを更新していく過程の中で、複数学年の先生が話し合いをしていくことができるならば、学年の枠にとらわれない複式的な実践が可能になります。
 異学年の子どもたちの集団で学習を進めると、同学年の子どもたちを一斉に扱うときとは違うよさが発揮できます。子ども同士が学びあうという場面が多くなるとともに、年上、年下の意識を背景に人間関係の幅を広げることができます。学校規模が大きくなればなるほど、異年齢の人間関係は薄れ、同年齢でさえ限られた人間関係しか維持しなくなります。少子化の現状では兄弟姉妹の関係も閉塞していますから、複数学年で学習する場を設定することは、今日的課題に対応していることになります。
 例えば、3・4年生が学級の壁を取っ払って、T.T.を組めばよいわけです。さらに加配の先生が動けるなら1学級で扱う子どもの人数より少ない人数のグループを構成していくことも可能になります。必ずしも隣接した学年でなくとも、共通のテーマがあれば可能だと考えられます。
 気をつけておきたいのは、安易に一緒にすることで、先生同士が依存しあってはいけません。お互いがどのように進めたいのかはっきり意見を交換しあって、学習時間中の主導権をどのように渡しあうか納得していないとむだになります。これは、T.T.の意図をよく考えずに、形式から入ってしまうと、意味のある役割分担は作られないのと同じことです
。T.T.の経験を積み上げてきた先生方なら、よくご存じのことと思います。
 ちゅうちょする材料として、教科の学習から発展的に関連づけたテーマでは、まだ習っていない学年の子どもとは一緒にできないという考え方があります。あえて関連しなくとも、興味関心さえ引き出すように投げかければ問題はないはずです。AB年度の複式では、しばしば学年が入れ替わって学習しますから、以前に学習したことを先生も子どもも意識しやすいというよさがあります。理由は簡単です。2学年分の指導内容を把握していないと複式の授業は成り立たないからです。単学年では、該当学年の指導内容だけ把握して指導されやすいという欠点が現実にあると思います。

 既習事項を生かすことができるのは、学習後に学習したことが統合化されている場合に限って有効なわけですから、すべての子どもにそれを求めるのは至難の業がいると思います。知識や技能を総合的に考えて、筋道の通った自分の考え方、判断の仕方を身に付けることができているならば、総合的な学習の時間が果たす役割はそんなに騒がれなかったでしょう。やはり、学習はしたが、断片的なものに終わっている子どもが多いのではないでしょうか。