和紙づくりの入り口
 バーチャルな素材に実践していない素材があってはいけませんから、和紙づくりに挑戦しました。紙漉きの経験は何度かありますが、材料から紙までという工程はやったことがありませんでした。テーマからは外れないものの、総合的な学習の時間は担当していないため、3・4年理科の余裕時間で入り口をこなしました。
1ガンピとり
 学校のそばの山にはガンピがたくさんはえています。自然探検を繰り返し行っていましたから、2学期のしめくくりに、地域の自然材料を生かしたものを作ってみようと投げかけました。「ガンピから和紙も作れるし、ヤマイモを掘って食べたり、栽培したりできるけど何に挑戦してみたいかな。」ガンピについては祖父母から昔採集して小遣い稼ぎをしていた話を聞いている子どももいました。食べることにも興味があったようですが、最終的に和紙づくりになってしまいました。
 「作り方をきっちり調べないといけないな。」というのが最初に頭の中によぎりました。ガンピの木の見分け方を現場で教え、皮むきをしました。そして、表皮をあらかた手で取るところまですませました。あとは水でさらしておくだけ。
2表皮の始末
 ナイフなどで最初にきれいにはぎ取っておけばよかったのですが、先を急いで失敗しました。水にさらしている間にできるだけ手分けしてとりました。完全でないため、後々この表皮のかけらを拾うはめになりました。根気よく子どもたちも作業しましたから、一安心です。
3不純物とり
 苛性ソーダを使うのが確実とはいえ、危険性が大きいので、別の方法はないかと私が密かにインターネットで調査しました。プール水の中和剤に使っているソーダ灰でいけることが判明し、安全性を考えてこちらが作業をすることにしました。3時間ぐらい40cmぐらいのアルミの洗い桶に入れて煮出しました。再び水にさらして、はさみで細切れにしました。
4繊維をほぐす
 木槌でたたいて、繊維を細かくくだく作業です。根気よく交代でたたき、表皮のかけらもさらにより分けていきました。
5紙漉き
 漉き枠は専用のものを作っていません。シルクスクリーンをやっていたころのスクリーン枠がありましたので、それを使いました。のせる木枠だけ図工室の材料で自作しました。たらいに水を張って、たたきほぐした原料を溶かします。洗濯のりを100ccほどいっしょにまぜます。漉き枠を沈めて水面まで持ち上げ軽く数回横にゆすります。あとは静かに枠を持ち上げて、水が切れるのを待ちます。「きれいな紙にしようと思ったらここで辛抱しないといけないよ。」と励ましながら、はやる気持ちを抑えます。水が切れると上にのせた木枠だけそっとはずします。ここで、乾湿両用の掃除機があると、作業が大変はかどります。残念ながら道具がないため、平らな机の上に漉き枠を裏表ひっくり返して置き、スクリーンの上からぞうきんで水気をさらにとります。あらかたとれたら、漉き枠を持ち上げると漉いた紙がはがれていきます。
6乾燥
 自然乾燥を2、3日かけて行い、あとでアイロンがけをすると完成です。「きれいな紙だぁ。」「繊維の模様がおもしろい。」「やぶれそうでやぶれないなぁ。」子どもたちは、木の皮が紙になるということを実感したようです。
7紙漉第二弾
 今度はミキサーの力を借りて、繊維をさらに細かくする作業を子どもたちとしました。「今度はどんな紙になるかなぁ。」と期待をしています。あとは同じ作業の繰り返しでした。紙らしい紙になって、「なかなかいい感じだなあ。」と満足したようです。

 さて、授業のしめくくりとして「和紙づくりをして問題になること、困ることはないだろうか。」と問いかけてみました。「水をたくさん使う。」「冷たい。」というのが一番でした。どうして冷たい水で作業するのだろうかという疑問に対しては「いい紙を作るためかな?」と投げ返したままになりました。作業の途中で出てきたことは「洗濯のりがなかったときはどうしてたんだろう。」というものです。