反復練習との接点
 教科の学習内容が精選されて、総合的な学習の時間が本格的に間近に始まろうとしているさなか、今なお学力低下論議は続いているようです。不安材料の一つに反復練習の減少がここ20年間でかなり進んだと感じていますが、みなさんはいかがでしょうか。
 反復練習は、繰り返し練習して習熟を図るために長年培われてきた学習方法の一つです。音読、視写、聴写、書取、計算、楽器の演奏、キャッチボール、素振り、ランニング、単語の暗記などがすぐに思いついたのですが、丹念に整理したらまだまだ見つかるでしょう。「つめこみ」と批判された時代に「つめこみ」を乗り越えてきた子どもたちと先生はあらゆる反復練習をとおして多くの内容をこなしたわけです。反復練習に興味を示さなかった子どもたちが、落ちこぼされたと考えられます。
 本質部分をつかむならば、理解や思考を助けてきたのが反復練習ということになります。内容がどんどん精選されたとしても、反復練習の量は基本的に減らしてはいけなかったのですが、現実はどんどん減りました。ところが、中、高の段階ではワークブックが増えていったのが現状だと思います。
 端的な目に見える例を挙げると、ボール投げの力は小学校段階でかなり低下しました。投げるという基本動作を幼児期に体験することが少なく、野球形式のゲームを経験する子どもたちが少なくなったことによります。また、パソコンのキーボードにさわる回数が多くなればなるほど、キーで入力していく速さは増してくることからも分かると思います。
 総合的な学習を進めるとき、知識量や表現力は思考を促すうえで重要視されます。ところが知識や表現力は総合的な学習の時間だけで獲得されるものではありませんから、教科教育の中で育てることを忘れてはいけません。反復練習の多くは、考えたり、表現したりする土台になるという論理的な理解を持っている先生方なら、決しておろそかにできないでしょう。
 学習の個別化を図り、問題解決学習や総合的な体験活動に長年取り組んできた愛知県のある小学校では、習熟のための反復練習が徹底して行われています。ところが、自由に興味関心にそって学習してきた子どもたちは、中学校で学習についていけないのではと外部から心配されたぐらいです。指導方法が変わっても、反復練習の中身と学習規律の徹底は延々と続けなければならないことを明らかにしています。
 もう一つの心配は、算数・数学教育に対する認識不足があります。算数は教えやすい、あるいは、複雑な計算練習はあまり意味がないと勘違いしている先生がいます。物事を抽象化して考えたり、論理的に考えたり、一つの概念を作ったりすることは算数・数学の学習をとおして形成されています。計算の方法を教えたり、問題の解き方を教えたりするだけでは、算数や数学を教えたことにはなりません。算数嫌い、理科嫌いを作る原因になっているのです。
 本質をとらえて、総合的な学習で使いこなせる大切な要素があることを先生は忘れないでほしいと思います。