課題発見の道「紙づくり体験」


 ケナフを育てて紙を作ろうという実践は、珍しい素材を取り上げただけではないのかなと思ってしまうことがあります。理由は簡単です。ケナフという材料は、いくら付加価値を説明したところで、もともと身近な素材ではありません。紙は繊維を糊で固めて、平らにしたものですから、身近なところから出発して問題を探すべきだと考えます。
 身の回りにある紙は、再び紙になることをまず体験してほしいのです。
「あなたたちが使った紙は、再び紙になりますか?」
紙の作り方を調べるところから学習は始まります。
「紙を作っているとどんなことが問題になるでしょうか?」
・たくさん水を使って、汚れた水はどうなるのだろうか。
・どんな紙でも再び紙になるのか。
・どうしてすべての紙が再生されないのか。
・回収業者の人たちはどんなことに困っているのだろうか。
・紙の原料はどこからやってきているのか。
・どんな木が原料になっているのか。
・すべての紙がリサイクルされるように自分たちにできることはなにか。
・紙を作るのにどうして水酸化ナトリウムがいるのか。
・再生した紙は何回も再生できるのだろうか。
・作るとき再生紙のほうが割高になるのはどうしてだろうか。
・作るとき再生紙のほうがたくさんごみができるのだろうか。
・洗い流せないインクは、どのようにしてとっているのだろうか。
 問題意識を高める練習が十分身についていないときは、先生自身が問題点をつぶやくことも必要です。また、子ども自身がつぶやいている問題点を聞き逃さないようにして、学級全体に知らせることも必要です。問題点を整理したら、子ども自身が課題を設定する運びとなります。そのまま自分の課題にする問題もあれば、追求できる言葉に置き換えたり、整理したりして、関心を寄せている子どもの課題になるものもあります。
○紙と紙でないものを徹底的に分別するにはどうしたらよいか。
○紙がリサイクルされやすいようにするにはどうしたらよいか。
○どんな自然材料で紙を作ることができるのか。
○再生のことまで考えた紙づくりはされているのか。
○紙の原料にする木を切りすぎて森がこわれたところはあるのだろうか。
 地球規模的な問題になっていくと難しくなりますが、身近な生活場面に問題点を引き戻すことで、その子の課題になる場合もあるでしょう。紙一枚が語りかけている環境問題に気づくならば、紙以外の素材に話が飛んでも十分まとまると思います。