総合的な学習の発問「水」
 環境問題の解決を実践しているところで大切にしている考え方があります。それは、「循環型社会」の構築です。水資源だけ、食だけという視点ではなく複合した物のサイクルをとらえる方法です。

 「あなたが今飲んだ水、手を洗った水は、どこにいくでしょうか?」
 「あなたが1回食事をとることによって、どんなものが消費されますか?」

 消費という言葉は難しいのですが、考えを広げるためには鍵となる言葉です。すべてのものが費やされて消えているということをあまり意識しない鈍感さに気づく体験活動が仕組まれていくことにより、何一つ消えていないことを認識させていきたいのです。手にしたものが、形を変えていくことはあっても、地球全体の総量では変化していないということです。

 「汚れた水はどのようにしてきれいになるのでしょうか?」
 「食事のあとのごみはいったいどうなるのでしょうか?」

 下流域で水の汚染が進むのは、バクテリアによる浄化機能の能力を超える水が流されるためです。浄化槽は人工的にその機能を利用していますが、完璧な循環型の機能は果たせていません。
 また、食事のあとのごみは、徹底的に分別していくことで問題点を見つけることが可能になっていきます。家庭科の調理実習の時間だけではたどり着けない学習です。調理くずは流しのネットに貯まったものまで集めることにより、生ゴミの循環型処理を体験することができます。処理機に頼らなくとも、土と容器だけでも可能です。循環過程の主体は土ですから、無菌状態の土や有機物の多い土を用意して比較することもできます。石油製品が混じると自然の循環型サイクルにのれないことも分かるでしょう。可燃物としてごみ処理に出してしまえば、消えるという印象が強化されます。
 循環型社会の実現でもう一つの大きな問題があります。地球上に住む人たちが、決して循環のチェーンを断ち切らないようにするにはどうしたらよいかということです。

 「どのようにしてみんなに知らせますか?」
 1人でもしないと意味がないし、1人だけでは意味がない。やらないよりやった方がいいが、やらない人はどうしてできないのだろう。・・・思いはいくらでも広がりそうですが、社会全体の経済効率という大きな壁もありますから、身近な範囲にとどまらざるを得ない部分もあります。