総合的な学習の発問「町づくり」
 総合的な学習を組み立てていくとき、指導計画や授業展開のシナリオを考えるより、発問構成を考えていくほうがより現実的なものになると思います。発問というのは先生の世界だけで通用する言葉です。それだけに職業人として使いこなしたい大事な要素になります。発問を軸にして学習の展開を考えていくことを提案します。
 そこで、これまでの指導案に表現されたもろもろの要素、あるいは授業研究の方法が、主体的な学習や問題解決的な学習に使えるかどうかという検討が必要となります。大半の指導案は、教える内容が一律に決まっている中で、到達目標が設定されている教科の学習だったからできたことです。総合的な学習では、大きな枠組みはあるものの、何を学習していくかは子ども自身の興味関心、問題意識に委ねられ、たどり着くべき目標よりも育てていきたい子どもの姿が重視されます。子どもの思いや願いが広く、深く、継続的に展開されるためには、先生の問いかけが大きな役割を果たすと考えます。学習素材の提供と同時に、考えるきっかけを作るための先生の「問いかけ」=「発問」が学習支援の中心となることを期待します。親切すぎると主体性を引き出せませんし、あまりに抽象的すぎると多様な考えは引き出せません。先生の問いかけがかなり重い意味を持っていることになります。
 初回は、町づくりを取り上げました。いきなり、

「障害のある人にとってこの町はくらしやすいでしょうか。」

と切り出すと、子どもの反応はどうでしょう。個別の問題点をなげかけるような発問で始めると、以後の展開がどんどんせまくなり、広がりよりも深めるほうに目が向いてしまうおそれがあります。障害のある人にとってやさしい町は障害のない人にとってもやさしい町になるはずだという考え方が先生の思いとして先行しています。

「あなたたちが住んでいるこの町のいいところは何でしょうか。」

 プラス思考を進めていく中で町の自慢となるものに目を向けた場合、問題点を掘り起こすことにつながるかどうかという心配が予想されます。子どもの目線で疑問や問題点に気づくようなきっかけを与えるためには、常に指導者としての先生が同様の資質を備えているのが有効なはずです。「どうしてかな?」というのは自然発生的には起こりにくいでしょう。

「あなたたちが住んでいるこの町は本当に住みやすい町でしょうか。」

 探険していく中で根拠をはっきりさせながら、

「どんな人にもやさしい町づくりか。」
「どんなところがいいか。」
「どんなところがかわったらいいか。」
「困っている人たちはどんな願いを持っているか。」

などの追求する疑問が出始めると、あとは子どものペースで学習が進んでいきます。