基礎的な学習はしてますか?
 この1年間で総合的な学習をどのように進めるか、多くの講演会、研究会、研修会が開かれ、出版物もあっという間に増えました。WEB上にも多くの実践が紹介されるようになりました。こんなにも興味関心を持って、学習が創造されていくことはすばらしいことです。
 このHPも知らぬ間に1周年を通り越して、できるだけ新しい視点を盛り込むようにしてきました。でも、やっぱり立ち止まって、振り返って考えてみたいことが出てきます。進んでいても、進んでいると思いこんでいても、停滞していると感じていても置き去りにしてはいけないものがあります。総合的な学習の時間にはめ込まれた学習内容そのものは吟味しやすいでしょうし、私も振り返ることをしてきたところです。

 
総合的な学習の枠組みに入り込んでいる間接的な部分を指摘しておきたいのです。1つは日本教育新聞のコラムにも取り上げられた「基礎的・基本的な学習」です。もう1つは「指導法」です。
 基礎的・基本的な学習は目新しいものではありませんが、20年たっても30年たっても進歩していない研究領域になっています。読み、書き、そろばんが基礎・基本というのなら、そのことを徹底すればすむことなのですが、教科書の中の学習内容の何が基礎的・基本的な事項なのかは深刻に論議されることなく抽象論で片付けられています。理化学研究の世界でも基礎研究は欧米諸国が熱心に継続しているのに、日本では予算的にも評価にしても冷遇されています。脚光を浴びる最先端技術の研究がもてはやされ、成果が産業に直結することを期待して優遇されています。基礎的・基本的なことを尊重する土壌がないといえばそれまでなのですが、教育研究も理化学研究も基礎研究があってこそ応用研究が成り立つという考え方は否定できません。
 算数の世界では基礎的・基本的なことはどうなるでしょう。1年生では20までの数概念と合成分解ができるということ。2年生では2位数の加減、1位数の乗法できること。・・・具体的に1つずつ内容を上げていくと同時にもう一つの作業が要求されます。小学校1〜3年の算数の内容は4年生以上中学、高校に至るまでの数学の学習の基礎になることを理解していないといけません。また、国語の学習についてもよく言われていることがあります。学業を終えた一般社会人が日常的に使っている、読み、書き、話す力は小学校4年生までの学習に依存しているといわれています。小学校段階の漢字が使いこなせれば、確実に新聞は読めます。総合的な学習の展開と同時進行で先生方が論議してお互いに理解し合っておかないといけないことが基礎的・基本的な学習です。

 指導法は、以前から述べているとおり、1、2回の実践で身に付くようなものではありません。先生の解説が減った、教えることと子ども自身が学ぶことの違いがつかめるようになった、子どもの活動や発表が増えた、などの変容からつかみ取ってほしいと思います。

 呪文のようなキーワードに振り回されてはいけないのですが、確かな考え方として

・ 体験をとおして子どもたちが問題意識を持ち、学習が広がっている姿がある。
・ 活動をとおして子どもたちが問題意識を持ち、学習が広がっている姿がある。
・ 教科、領域で基礎的、基本的な内容を学習させ、習熟を図っている姿がある。
・ 指導法を変えるために、様々な教科領域で教材開発をしている先生の姿がある。

かどうかを今一度振り返り、基礎的・基本的な学習内容を論議できれば、うやむやが少しは晴れそうな気がします。