学習素材「ヤーコン」
 私自身の栽培歴はありません。数年前から通信販売の品目に上がり、気になる植物となっています。同じキク科のダリアやキクイモとよく似た特徴を持っています。ダリアは食用にはなりませんが、キクイモは、かつて食糧増産を必要とした時代に導入されました。しかし、現在は野生化して見向きもされず、密かに栽培して食している人は少数派です。
 地中にできるのはデンプンを主とした芋ではなく、フラクトオリゴ糖を貯め込んだ根塊です。原産地は南アメリカ、アンデス地方、ジャガイモやトマトと同じ起源です。別名、アンデスポテトが紹介されています。健康食品の安全性や有効性を公開しているサイトで調べても特徴あるよさは見つかりませんでした。唯一、食べた人にアナフィラキシーショックの症例があるというぐらいです。販売のための売り込みで「ダイエット」「整腸作用」「コレステロール抑制」「糖尿病への効果」などが紹介されていますが、根拠となるだけの情報は得られませんでした。根菜類の仲間ですから、確実なのは食物繊維がたっぷりです。これだけはゴボウなみです。
 生食、加熱加工で食することができます。草丈が2mほどになるということですから、栽培にあたっては、台風の心配だけです。ヤーコンは町おこしの特産品にしている地域もあり、もの珍しさが一番の売りでしょうか。だれでもどこでも栽培していないというところが興味をひく部分です。
 根塊は寒さに弱く、霜に直接当たると腐れてしまうようですから、次の年に種として持ち越すには寒さ対策が必要です。サトイモのように塊をくずさずに地面に埋めておけば、葉や茎が腐れても生き残るのではないかと思います。サトイモは株の塊をくずして、小芋だけを地中に埋めて保存しても腐れてしまいました。育てたままの状態で土をこんもりとさせておけば腐れるものはわずかです。キクイモは耐寒性があるため、放任していても生きながらえています。ヤーコンはダリア、あるいはサトイモ並みの冬越し対策が必要と思われます。
 栽培してみようと投げかけるためには、調理方法の見通しが必要でしょう。調べていくうちに分かったことですが、ゴボウと酷似しています。違いは、果物のように生で食べられることです。他の果物と合わせてジュースにすることも可能です。炒め物、煮物、和え物、サラダ、漬け物、ジャムなど広範囲に使えます。
 食べられる植物の栽培は、野菜に限らず食文化の変化に深く関わっています。古くは中国や朝鮮半島を通じての交易から始まり、江戸初期のころにはヨーロッパとの交易の中で伝えられた食べ物も数多くあります。開国してからの明治以降は、食文化の西洋化に伴って現在なじみになっている野菜がたくさん流入しています。
 食べ物に対して柔軟な受け入れをしてきた日本は、世界に誇れる旨味を維持しつつ、世界の旨味も取り込んで、豊かな食文化を育んでいると思います。だからこそ、総合的な学習で食文化を学び取る値打ちがあるのです。飽食の批判にさらされているのは、消費者ではなく、売り手の仕掛けです。選択権のある消費者である子どもたちは、本来の旨味を体験的に理解することで、生きるための基盤を身につけることができると考えます。子どもたちが、スナック菓子やファーストフードから脱却できる学びの必要性を感じます。