学習素材「イチゴ」
 年中出回っているイチゴの旬は、自ら育てることでつかむことができます。イチゴの苗は9月ごろに集中します。これは親株からランナーが出て、子株が植え替え時期になるからです。この子株を数日間冷蔵して、寒さをくぐらせると秋植えしたものが12月には収穫できるようになります。ただし、この時季に成長させるためには、加温したハウス栽培となります。
 年中出荷を可能にしたのは、温度管理と受粉の手助けをするだけで操ることができるからです。自然の流れにそわない温度管理にはエネルギーコストが必要になります。時季はずれのイチゴが高い値段で取り引きされるのは燃料代が上乗せされているからです。そこで、学校現場において学習素材として扱うときは、旬に合わせた時季に取りかかります。学年をまたいで越年しますが、ムギ、ソラマメ、エンドウなどの似たもの同士を扱えば、多様な組み合わせが可能になってきます。
 イチゴ栽培で知っておかなければいけないことをいくつか紹介しておきます。まず、親株から出たランナーにつく子株を育てる理由です。親株はそのままおいておけば、翌年再び開花して実を付けます。しかし、その間に病気を抱え込んだり、根が混みすぎて成長が鈍ったりします。1年ごとに株を更新することで、病気のでない元気な株を維持することができます。つまり、繰り返し継続的に取り組むならば、新たに苗を買う必要はありません。夏休みに入る前にイチゴの株を片付けないでおけば、9月までにたくさんのランナー株が育ちます。それを来年春のために移植すればいいのです。
 次に、実が腐れないようにするために植え方に注意します。コンテナや鉢植えでは、実が自然にぶら下がるようになるためうまくいきます。路地植えでは、水がよくはけ、蒸れないように山形のうねにしたり、マルチで覆ったり、しきわらをしたりします。風通しのよい状態で実が生長すれば、途中で腐れることはありません。栽培農家の中でも路地に植えないで、一手間かけて棚の上にコンテナ栽培しているところも多くなりました。
 おまけの情報です。イチゴの種は実の周辺についています。この種をまけば発芽します。種ごと食べてしまうため、種をまいてみるという発想は出にくいことですが、中学生が挑戦し、育てた事例に出会ったことがあります。6月ごろには落果、発芽適温になる秋または春にまくことになります。2年ごしで育てます。最終的にどんな実がなるかは育ててみての楽しみです。イチゴは主に種子で繁殖するようになっていませんから、自らの花粉であっても交配の結果が出て、すべての種子が親株と同じ特性を持つとは限りません。強健な性質のみが引き継がれ、結果的には野生種の傾向が強くなるでしょう。いわゆるワイルドストロベリーと称されるものです。
 イチゴは生で食べる以外にジャムづくりが適しています。ほかには、ゼラチンや寒天で固めてゼリーを作るぐらいでしょう。ジャムは砂糖を控えるとカビが生えやすくなります。加熱してつくりますから、1〜2週間の短期間に食べつくすのであれば冷蔵するだけでしばらく保存できます。イチゴ大福は餅米を粉にして皮を練り上げれば簡単にできます。ただし、気温の高い季節だけに調理後すぐに食べきるようにしないといけません。
 学習素材としてイチゴを採用するならば、一人一鉢で育て、次の学年に持ち越して収穫、加工をすれば旬の味わいを体験することができます。ランナーが出るまで世話をし、再び植えつければ継続的に育てていくことが可能です。用地さえ確保できれば、収穫後に鉢ごと畑に埋めておくと水やりの世話は省けます。