学習素材「トマト」
 学校現場では、たぶん種から育てる先生はまれだと思います。私自身も毎年自家用に育てますが、市販のポット苗です。販売されている種は、トマトに限らず一袋の量が多すぎます。ということで、少量栽培には手軽なポット苗が重宝します。
 トマトは、多様な品種が数多く出回っていますので、系統をよく下調べしてから目的にあった苗を調達することが大切です。大きさでは大玉、中玉、小玉の系統があります。それぞれに、生食用と加工用があります。実の色も赤、桃、黄、緑、白と多彩です。生食用は最も手軽な種類です。生食用を加工したり、加工用を生食したりしても何ら問題はありませんが、食味はそれなりの特徴を持っています。
 栽培農家の方と話をしたことです。いくつかこつがあり、放任ではうまくいかないということです。まず、芽欠き作業と芯を止める時期です。トマトは連作を嫌う作物ですが、生育は旺盛です。葉の付け根から次々とわき芽が出てきますから、摘み取る作業です。管理が行き届く農家では2本立て、一般的には1本立てです。芽欠きをしていくと、それに対抗するように根本から新たな芽が伸びてきます。それも摘み取ります。さらに、実に十分栄養分を行き渡らせるために摘心という作業があります。実の付く房が3、4本程度で頂点の芽を摘み取り、さらなる伸長を止めます。
 このようにして、適切な世話をすると充実した実を収穫することができます。ミニトマトを放任で育ててしまうと小さめの実がなりすぎ、大半を土に戻してしまうことになります。花がつき始めたころから、しばらくは手をかけるようにしたいところです。もちろん、放任した場合と手をかけた場合の違いを見るようにすれば、学びの場は一つ増えます。
 つぎに、裂果を避けるために水やりと直射光を遮る工夫です。実が赤くなり成熟してくると水分過多や直射光によって実の表面が裂けることがあるということです。ここまで管理することは困難でしょうから、なぜ実が裂けるのかを知っておくだけになると思います。
 糖度の高い品種が多く出回りだしたミニトマトは、生食用として人気があります。トマトソースとして加工するには完熟したものを使う方がいいですから、学校では量がまとまりにくい欠点はあります。また、生食の場合トマトだけを食べる調理法は限られています。他の生食野菜と組み合わせる方が釣り合いはとれます。
 かつて、耳から入ってきた話です。戦後駐留したアメリカ兵が、トマトにたくさんの種が入っているのはまずい、日本には種の入っていないトマトはないのかと注文を付けたそうです。その話をもとに、種の入らないトマトの開発に乗り出して成功したということです。種ができにくいということは、次に栽培しようとしても再び交配を繰り返さなければならず、ハイブリッドになってしまいます。現在は、種の入る品種も数多くあります。
 異なる品種を栽培すれば、翌年変わり種を育てることも可能です。新たな品種が生まれる楽しみもあります。交配した種を伝えていくことで育てる楽しみを継続したり、他に広げていったりすることで新たな展開が生まれるでしょう。ただ、連作障害にだけは配慮した方がいいです。