学習素材「緑の壁」
 緑の壁は、バイオラング(生物の肺)ともよばれています。2005年の愛地球博で出展され話題になりました。夏に向けて建物や舗装路の輻射熱を減らすとともに、二酸化炭素削減につながる効果があることから環境対策で広がっていきました。
 街路樹や建物のまわりに植栽をすることは以前からあり、同じような効果を得てきました。建築デザインの都合、保守の手間が大きい、場所の確保などの問題から、積極的に取り入れるところまでにはなっていません。問題点を克服して、植え付ける植物の種類と灌水方法を工夫することで成功したのは、パトリック・ブランです。最小限の空間と壁面の有効利用で環境とデザインを融合させています。
 手軽に壁面の輻射熱を軽減する方法として、つる植物を窓際に植えたり、外壁にはわせたりしてきました。場所は少なくてすみますが、毎年植えることになります。ツタは一度植えだけで育てていけるものの成長とともに手入れの手間は増えていきます。多年生のアケビやカズラ類は、自ら壁にはりつきませんので、網を使うなどして固定することになります。
 ゴーヤをテラスに植えて夏場の輻射熱を減らす取り組みは、環境負荷が少ない効果的な方法として報道されました。水やりさえ続ければ、9月の終わりごろまで維持できます。学校で取り組むときに一番考慮しなければならないことは、水やり作業です。子どもたちが登校しなくなる夏休み中、水やり当番が必要となることと一番効果が大きいときに体感できない問題点があります。ゴーヤは虫による食害や高温多湿期の病気に強いという特徴があり、最適の種類です。ほかのウリの仲間に比べ、水を多く求めないというのも助かります。
 もちろん、アサガオやヘチマなど身近な種類で効果を比較してみるのもよいでしょう。同じ素材でも葉の混み具合で効果は違ってきますから、条件ができるだけ同じようにする難しさもあります。また、学校の立地条件もあり、緑に囲まれていたり、植栽がしっかりできていたりすると必要感が薄れます。緑に囲まれていない、夏場の照り返しが強くて暑いという現実の問題にぶつかる条件があれば、学んでいく流れがはっきりします。緑豊かな自然に囲まれた学校では盛り上がらないわけです。
 このほかに屋上緑化、屋根全体の緑化の取り組みもありますが、仕掛けが大きくなりますから、簡単に試すことはできないでしょう。取り組んでいる方はどこにでもおられるとは限りません。施行事業者から情報を得て聞き取りをせざるを得ないでしょう。

 水やりの余談です。プランター栽培での水やりは、土の性質を理解していないと確実に水切れにいたり、枯らしてしまいます。というのは、乾ききった土に水を数分程度かけても中まで水がしみこむことはありません。表面だけが濡れて見た目には水やりができたように見えます。しかし、少し土を掘り起こしてみれば、しみこんでいないことは容易に分かります。水をやっているのに根まで水が届かないため、やがては枯れるのです。
 根が水を吸い込む仕組みです。細いパイプを束ねているようなもので、水の出口は葉の表面になり、入り口が根になります。毛細管現象でパイプには水が満たされ、蒸散作用でなくなった分根から水を吸い込みます。切り花の水揚げは、切り口のパイプがつぶれたり空気が入ったりしないように、水の中で切ったり焼いたりする方法がとられます。