学習素材「バイオマス燃料」
 化石燃料の代わりにバイオマス燃料が注目を集め、アメリカでは、食料や飼料の確保を飛び越えてプラントがあちこちで動き出しました。化石燃料の枯渇問題を救うかのような動きを冷静に学んで、本当に問題がないのかを検証していかないといけない素材です。
 現在、指摘されている問題点は次の3つです。
1食糧自給率に影響を与えるという指摘がある。
2製造段階でどの程度二酸化炭素を排出するか。
3亜酸化窒素の排出が2倍となり温室効果ガスの削減にならないという指摘がある。
 穀物の搾りかす、廃材、おがくず、廃油などは、廃棄物を利用するのだから一石二鳥だと喜べないところがあります。1番だけ問題ないのであって、2、3番の問題は解決できません。
 バイオマス燃料が注目をあびたのは、植物が取り込んだ二酸化炭素を消費するだけだから差し引き増減はないという考え方です。しかし、直接、植物を利用するのではなく、運搬、加工していますから、単純に帳消しというわけにはいきません。作る段階で二酸化炭素の排出を全くしないということはありませんから、温室効果ガスの増加に荷担することは避けられないでしょう。また、作られたものは燃料として燃やすわけですから、二酸化炭素以外の酸化物も見逃せません。
 捨てられるものを利用するのはいいことだという価値観だけでは、地球温暖化を阻止できません。燃やす場合とバクテリアが分解する場合とでどれぐらい違いが出てくるのか、差引勘定が必要です。穀物の生産活動に使われる燃料、生産物を運ぶための燃料、できたエタノールを運ぶための燃料など、生産物とプラントが離れていると消費量は多くなります。つまり、二酸化炭素の排出を抑えることは経費にも影響を与えます。
 食用廃油を石けんにしたり、軽油にしたりする取り組みが、なぜ継続的に拡大しないのかということです。食用廃油が集まりにくいのか、作る経費が利潤を生み出すほどにならないのか、そのあたりの事実は広く知らされていません。追求できる部分です。
 エタノールは有史以来飲み物として身近な存在です。もともと植物であった石油から化学的に合成することも現に行われています。このようないきさつの中で、食料を燃料に使うと市場は混乱し始めています。混ぜるのはガソリンにだけですから、エンジンや排気ガスに新たな問題点が見いだされているようです影響の程度はやってみないと分からず、たぶん大丈夫だろうというぐらいの見切り発車です。
 温室効果ガスといえば二酸化炭素だけのような話題が多い中、燃料として使われているメタンも影響力は大きいのです。ひところ、牛をたくさん飼って大量にげっぷが出るとメタンが放出され、地球温暖化になると騒がれたこともあります。捨てられるものを利用してメタンを作るという取り組みもありますが、経費の面と最終廃棄物の処理で取り組みの拡大には至っていないようです。
 いずれにしても、資源が循環するためには、乗り越えないといけない壁がいくつもあります。都市集中型のまま進めていくことが一番大きな問題だと私は思っています。人や物の流れがのんびりしていた時代には、政治や文化の要に人が集まってきたことは確かです。
 しかし、流通と情報・通信が発達した現状では一極集中の弊害の方が大きくなっています。持続可能な燃料を開発することが有効なのか、町づくりの発想を変えて無駄を減らすことが有効なのか、検討に値するときです。バイオマス燃料しか手に入らなくなったら、作るための経費は割高であっても応分の負担をするようになります。市場原理だけで経済活動をすると、環境を維持できなくなることは多くの場面で経験してきています。燃料の確保と地球温暖化を阻止することは切り離してはいけないことです。バイオマス燃料のよさと欠点を知ったうえで総合的に選択することです。需要があるからと市場原理に流されている今の動きは安易に同調できないでしょう。