総合では書く力
 国語を土台にして、より実践的な書く力を身につけることです。目的にあった文章を書くことができるようにするとともに、筋道を立てた文章を書くことが求められます。そのためには、数学的な考え方、科学的な思考、社会的な思考など、教科の学習で培う力も土台として育てていかなければなりません。実践的というのは、言い換えれば実用的な文章を書くことになるのです。まとまりのある作文を思い浮かべると国語の学習にとらわれてしまいますから、目的にあった実用的な文章を書くという範囲で考えていきます。
 まず、1時間1時間の授業の中でどんなことを書かせているかです。最もよく目にするのが、ワークシートを与えて、項目だてした枠の中に書かせる方法です。先生の意図にそった項目で子どもたちは書くことが多いのではないでしょうか。それよりも、項目を手がかりにし、子ども自身が観点を絞り込んでかけるようにしないと書く力につながりにくいと考えます。つまり、子ども自身が項目を選んで自分の考えを文章にしていく作業です。まとまった作文ではなく、メモ書きでいいのです。
 では、どんな項目があるか整理してみます。

・聞き取ったことを書く
・見たことを書く
・気づいたことを書く
・分かったことを書く
・分からないことを書く
・方法を書く
・感想を書く
・考えたことを書く
・動機を書く
・疑問に思うことを書く
・たずねたいことを書く
・頼みたいことを書く

 「自分で考えたのかと思ったら、引用だった。」「資料のまる写ししかできない。」というのは、よくある話です。「○○を書く」という意図的なとらえ方が子どもたちに伝わっていないとできないことです。こうした学習の方法をいつでも見られるよう教室に掲示してあれば、子どもたちにとっては大きな手がかりとなるはずです。個別にその都度、助言をしていくのではなく、共通の学習方法を示しておくと意図的な文章を書けるようになると考えています。
 聞き取りの学習に出かけるとき、ワークシートを用意し、聞き取ったこと、分かったこと、感想の項目を示すと、そこに当てはまらないものが出てきます。ワークシートの最大の欠陥です。日頃から学習方法を鍛えておけば、白紙一枚で項目を選びながら子どもたちは書けるようになります。ワークシートは一見重宝な準備物に思われがちですが、思いつくままに自由にかけないという大きな欠点があります。安易な使い方は慎まないといけません。
 もう一つの問題点は、時間の確保です。書くには時間が必要です。書き写すのではなく、考えて書くのですから、時間は十分とりたいところです。しかも、個人差が大きい力ですから、早く書ける子どもに対する配慮が求められます。時間を生み出すためには、主導権を握る先生の話が長くならないようにするだけです。さらには、考え中の子どもを遮るような声かけは慎むことです。何を書けばよいか分からない子どもと考えている子どもの違いを看取らなければなりません。
 最後に気になっていることが一つ。紙でも電子メールでも同じことなのですが、きちんとした手紙の様式に則った書き方が子どもたちに伝わっていないことです。お礼状、依頼状、問い合わせなど、学習を進める中で相手と連絡を取りたいとき、きちんと手紙が書けることは将来的にも大切なことです。時候のあいさつ、相手に対する気づかい、断り書き、用件、締めくくりのあいさつなど、決まり切った言い回しが身につくと、礼儀をわきまえ相手のことを意識した文章が書けるようになります。
 昨今の電子メールは、自分の都合だけを並べ立てる失礼な文章がたくさんあります。ダイレクトメールでもここまでくだけてはいないのに、こと電子メールになると無茶苦茶です。相手に差し出す手紙と何ら変わらないことをもう少しまじめに広めないと日本語は駄目になります。