総合ではまず導入
 授業の導入といっても、単元の初めのこともありますし、1時間1時間の授業の初めということもあります。ここでは、後者のほうについて取り上げます。これまで、導入でどんな学習素材を提示していくかを取り上げることが中心だったと思います。そこで、見過ごしてきた所要時間を問題にしたいと思います。
 小学校の場合1単位時間は45分です。普段の授業で導入にどれくらいの時間を費やしているかです。5分でおさまっているならば、1時間の授業の学習過程を意識した流れがついていると判断できます。もし、10分から15分の時間を使うことが多いようならば、話し合ったり、まとめたりする時間の不足を感じているのではないでしょうか。先生がどこに時間をたっぷり使いたいかという思いが、意に反してたっぷり時間を使いたいところにたどり着くための前口上に時間をとられていると想像するのです。
 先生が主導権を握って、始めから終わりまで采配をふるうのであれば、時間配分は大きな問題ではありません。しかし、主体性を引き出したり、自発的な活動を求めたりする授業を展開しようと思うと時間配分は避けて通れない問題です。子どもたちが自ら考え、学ぶ時間を保障しなければならないからです。教科の学習では問題解決型の授業だけでなく、一斉に学習課題をこなすだけの授業もあります。どの時間も同じ対応でないことから、先生の授業に対する姿勢次第で導入に費やす時間が変わってきます。
 やり方が分からない、手間取るだけで面倒くさい、どっちでやっても結果は同じ、一斉に引っ張っていく方がやりやすい、などの理由を独断でつけて問題解決型の授業が取り入れられない実態はあります。総合的な学習の時間まで同じようになったら、趣旨もねらいも置き去りになってしまいます。
 では、導入を5分以内にとどめるにはどうしたらよいかです。形式的に時間を縮めるのは論外です。5分間の中身に必要なことは

・学習課題に興味、関心を持つことができる。
・この時間に何をしたらよいかが分かる。

この2点につきます。
 興味、関心を持たせるための仕掛けとして、投げかける材料=学習素材が必要なことは、これまで繰り返し提唱してきたことです。もし、これを省いてしまったら、説明だけで子どもを動かすことになり、自発性は期待できなくなります。教科でも総合でも同じことです。
 次に必要なことは、学習課題やめあてを理解させなければなりません。学習素材が必要感を満たすものであれば、この部分は簡潔明瞭にすみます。逆になると、学習課題やめあてを子どもに押しつけなければなりませんから、納得させようと説明が長くなります。強引になればなるほど、方法が示されたり、道筋がつけられたり、注意事項がたくさんあったりして多くの時間を費やしてしまいます。子どもたちがやりたくてウズウズするような状況ができていれば、うまくいっているわけですから、余分の説明は必要ありません。
 これらの要点は、何も授業だけに限ったことではありません。行事、講演会、研修会、講習会いずれをとっても前置きが長かったり、全体の流れが見渡せない導入をしたりすると参加者の意気込みは最初にそがれてしまいます。講演の講師が本題とは関係のない前口上を15分もすれば、聴いている方は勘ぐってしまいます。時間をもてあましそうなので時間つぶしをしているのだろうかと思ってしまいます。あるいは、中身が薄いから余談ごとで肉付けしているんだろうかとさえ思ってしまいます。
 5分間の導入は簡単そうに見えて、実践してみると苦労するでしょう。短い言葉と分かりやすい語り口調は、先生という職業意識が求められます。やっぱり、話のうまい先生は、さすがなんです。流暢というより、分かりやすいのです。