総合的な学習でも「なげかけ」
 総合的な学習の実践が停滞しているときは、生活科で培ってきた先行研究をいま一度ふりかえってみると役に立ちます。
 生活科は教科として学習内容の枠組みが大まかに指定されています。総合的な学習にはそれがありません。活動や体験をとおして主体的に学習を進める点は共通しています。学びの過程の中に発見、疑問、感動などがなければ、活動しただけ、体験しただけになってしまいます。共通する部分で「なげかけ」という手法は、利用価値が大きいものになります。低学年の経験がない先生、生活科を研究対象としてかじらなかった先生は、「なげかけ」にぜひとも挑戦してほしいところです。教科としての生活科が本来の趣旨を小さくしたいきさつが一部にはあります。活動が充実して、子どもたちが楽しんでいたらよいのではなく、やはり活動の中から低学年なりに「学び」が発生しなければなりません。
 「なげかけ」る素材は、テーマや枠組みのような抽象的なものでは役に立ちません。できるだけ具体的な物を示して、多様に考えられる内容を仕掛けなければなりません。もちろん活動や体験そのものが最初の投げかけ材料になることも考えられます。「やってみたい」「おもしろそう」「別のこともできそう」という気持ちに子どもたちを引き込む仕掛けです。「今日は○○をします」というのはなげかけにはなりません。活動の主体が常に子どもの側にあるという認識のもとで「ことば」を組み立てていただきたいのです。これは、職業人としての先生であることが問われている部分でしょう。だれにでも簡単に「なげかけ」ができるのでしたら、苦労はしません。やっぱり先生でないとうまくいかないんだという世間の信頼が生まれるような実践にしたいところです。
 過程をおおざっぱに描くと教科の学習は導入で間口を広げておいて、次第に集約しながら一つのめあてにたどり着くような流れです。ところが、生活科や総合的な学習では、できるだけ広がりが期待できる特徴的ななげかけ材料から、活動が広がりを見せ、個々のめあてが異なっていてもオープンエンドにたどり着くような流れが描けます。
 長年、子どもたちが一つの目標に一斉にたどり着くように指導してきた固定観念を自ら崩さないと、「なげかけ」も子どもたちが飛びつくことだけに目を奪われてしまいます。