総合的な学習と調べる力
 学習の中身を創造していくためには、子どもや先生の調べる力を最大限発揮するようにしてほしいと思います。最初はだれしも楽な調べ方をしてしまうでしょう。それは調べさせられてきたからにほかなりません。しかし、訓練をしていくことで、分からないから調べるという動きができます。目的を持って調べるという意識ができあがった時点で、どんな方法を使って調べたらよいかが見通せないと、せっかくの意欲もそこでしぼんでしまいます。自発的に調べたいときが、興味関心の頂点になります。頂点にあるとき、調べて分かったことは満足感となるでしょう。
 そこで、調べる方法と材料がつかめるように、指導者は「こんな方法で調べたらどうですか」といえる手だてを持っておかなくてはいけません。
 では、これまでの調べるという方法をおおざっぱに羅列してみたいと思います。
・先生、友達、家族など身近な人を相手にたずねる方法。
 相手が生身の人ですから、調べたいことがあいまいでも、相手がこんなことを明らかにしてほしいのだなとくみ取って情報を知らせます。誰も知らなければお手上げになります。子どもの側に立ってみると、さほど苦労しなくても安易に分かったつもりになってしまう心配があります。
・専門家にたずねる方法
 相手から確実に期待する回答が得られるだろうという安心感はあります。興味の方向が定まって、専門的な知識や技術を持っている相手に対しては、真剣さも期待できます。答えるほうが子どもの理解の程度をくみ取りながら説明できれば言うことなしです。
・辞典、事典を使って調べる方法。
 文字の並び方が分かっていないと作業することができません。さらにふりがなのない漢字は読みと意味を知らなければ、内容を把握することができません。目的の言葉がないときはお手上げになってしまいます。探しあてたことを読み、さらに言葉の意味を調べるという煩わしさから、苦労とともにあきらめもはやいという心配があります。基本的な学力が問われる方法になるでしょう。
・図書館の本で調べる方法。
 説明や写真など目的にあった本を検索できるかどうかにかかってきます。辞典や事典では得られない詳しい情報が得られるよさがあります。関連しそうなことが載っていても、必要なことを取捨選択しながら調べるには、その子の知的水準に頼る部分が大きいでしょう。
・ウェッブを検索して調べる方法。
 調べたいことを実現するには、話し言葉、文字、映像、実物、模造品など情報の媒体がその子にとって使いこなせるものなのかという関門が待ち受けています。検索が簡単にできるだけに目的外の結果も入り込みやすい欠点はあります。便利なのは、漢字の熟語を平仮名に変換する便利なアプリケーションも配布されていることです。
・博物館、資料館、現地、現場で調べる方法
 対象は限定されますが、移動手段と時間の問題を解決できるものに限られるでしょう。
 いずれの方法をとっていく場合も、先生は子どもに対して調べることは手段であって、最終目的でないことを教えなければなりません。調べたことが事実であるかどうかを検証する思考過程が欠かせませんし、事実を提供しているのがだれなのかという判断も欠かせません。さもないと、手順を抜きにして調べたことだけを並べ、いかにも自分がまとめ上げたと思いこんでしまう誤りも起こるわけです。これまで教科・領域で積み上げてきたことなのです。調べたことをもとに、自分が考えたことを表明していく活動を大切にしてほしいと思います。