学習素材「非木材パルプ」
 紙の学習素材については、別のところにありますので、ここでは木材パルプ以外の学習素材について紹介していきます。石や木を板状にして文字を記すことから始まった記録は、紙の登場によって飛躍的に進歩を遂げています。ビデオテープがDVDディスクに変わったり、フロッピ−ディスクがCD-ROMなどの大容量記憶媒体に変わったりしたのと同じようなことであったのではないかと想像します。
 紙の原料は、科学的にみていくと、セルロースという植物繊維を利用しているにすぎません。つまり、繊維質のある原料ならば、何でも紙になります。タマネギの皮やキャベツからでも紙を作ることができるのです。
 そこで、木以外の原料がWEB上にどの程度出ているか検索してみますと次のような結果となりました。上位に上がってくるものだけから抜き取っているので、これ以外にもあるかもしれません。

竹、ケナフ、アシ(葦)、麦わら、稲わら、パームヤシ、トウモロコシの絞りかす(マイス)、サトウキビの絞りかす(バガス)、バナナの皮や樹皮、綿花の紡績の際に出る繊維(コットンリンター)、綿織物の屑(コットンラグ)、亜麻を原料にした麻紡績の工程から出る短繊維(waste)アオサ・アオノリなどの緑藻、海藻のアマモなど。

 原料としては、広範囲にわたるものの、次のような実用性の条件に当てはまるものに限られています。

○原料が低価格で大量に手にはいること。
○繊維分を取り出すのに工程が簡単なもの。
○できた紙が破れにくく、書きやすく、インクがなじみやすいこと。
○長期保存に耐えること。

これらの条件に一番よく当てはまるのが木材パルプということになります。ところが、森林資源の有効利用になるだけの資源再生に要する時間が追いつかず、森林破壊になってしまう問題が生じてきました。それではということで、非木材パルプに紙の原料を求めてきた経緯があります。
 原料の中には、短い繊維、切れやすい繊維のものもあります。古紙が再利用されにくい事情は、コストがかかることや繊維が短くなるために強度を上げなければならない問題点を乗り越えて作られています。再生紙の再利用には、さらなるコストと技術が要求されます。再生紙を使っているから、一件落着とはなりません。

 以上のような背景をふまえて取り組むことで、珍しい材料で紙を作りましたという完結型あるいは興味本位の体験学習にならないように流れをつけていくことができると思います。非木材パルプ原料の紙が、どの程度流通しているかを調べると話題と現実の開きが伺えそうです。私が目にしたことがあるのは、ケナフとマイスぐらいです。非木材パルプは、多様な広がりと自然環境に関わる学びを提供する学習素材です。
 日本古来の和紙の原料であるコウゾ、ミツマタ、ガンピは、樹皮を使っています。大量に使われる木材パルプとは異なることを付け加えておきます。